文/柿川鮎子
ワシやタカが悠々と空を飛ぶ姿を見ると、誰もが心を奪われます。王者の風格を備えた美しい姿は、最近、緑化が進み、小鳥やネズミが増えている都心でも観察することができるようになりました。皇居周辺では定期的にオオタカを観察することができます。
徳川家康もタカが大好きで、戦闘訓練と健康維持のために鷹狩を楽しんでいました(参照:「家康も大好き!江戸時代に「鷹狩り」が武士の間で流行った3つの理由」)。過去から現代まで、ワシ・タカ類は人々の心を捉えて離しません。
ところでこのワシとタカ、同じ猛禽類ですが、いったい何が違うのでしょうか? 野鳥観察の際、見た目でワシとタカをどう区別したらよいのでしょうか? 疑問に思っている人は多いでしょう。そこで今回は、ワシとタカの違いについて紹介します。
基本的には大きさで区別しているだけ!
ワシとタカ、実は同じタカ目タカ科の同じ鳥の仲間ですが、大きい方をワシ、小さい方をタカとして区別しています。具体的に、オオワシとオオタカで大きさの違いを見てみましょう。
オオワシの雄は全長が88㎝、雌はそれより大きくて100㎝、翼開長は約200~250cm程度です。一方、オオタカは雄の全長が約50cm、雌の全長が約60cm、翼開長は約100~130cmぐらいと小型です。
空高く飛んでいても、その大きさの違いは歴然としています。まずは大きいのがワシ、小さいのがタカと覚えておいてください。
小さいワシや、大きいタカもいて大混乱
大きさによる違いで呼び名を変えている、ワシとタカ。実はこの区別、一見するとわかりやすいのですが、例外がたくさんあります。
まず、タカより小さなワシが存在します。石垣島、西表島、与那国島などの八重山列島に生息する「カンムリワシ」は、体長は55㎝程度とオオタカの雌より小さいのです。小さくてもワシ、なぜそう呼ばれるようになったかというと、カンムリワシが生息している地域はカンムリワシより大きな猛禽類がいなかったから。八重山列島では一番大きいので、ワシになってしまいました。
逆に、「クマタカ」という体長70cm以上ある大きなタカもいます。体長55㎝のカンムリワシよりずっと大きいのに、タカの名前がつきました。大きいのにタカと呼ばれる理由については諸説ありますが、クマタカが生息している場所に関係しているという見方が一般的。クマタカは森の王者と呼ばれ、日本全国の森林に生息しており、高い樹木のてっぺんに止まっていると、大きな木々や、背景の山々に埋もれて小さく見えます。
また、生息地がオオワシなど他のもっと大きなワシ類のいる地域と重なり、比較すると小さく見えるので、タカと名付けられたという説もあります。結局、大きいか小さいかは、その土地で見た人々の主観であると言えるのかもしれません。
【ワシとタカ、見分ける3つの究極ポイント。次ページに続きます】