文・写真(一部)/柳沢有紀夫(オーストラリア在住)

オーストラリアのノーザンテリトリー(北部準州)にある「カカドゥ国立公園(Kakadu National Park)」。ユネスコの世界遺産の「自然遺産」と「文化遺産」を兼ね備えた「複合遺産」にも登録されているこのエリアは、訪れた人に「天国はここにある」と実感させる素晴らしい場所だ。

©Peter Eve/Tourism NT

熱帯に位置し自然豊かなカカドゥ国立公園では、随所で様々な珍しい鳥を目にすることができる。今回は数あるバードウォッチングスポットの中でも、アクセスが容易で鳥との遭遇率も高い「イエローウォーターリバー・クルーズ」と「マムカラ・バードサンクチュアリ」の2か所を紹介しよう。

*  *  *

まずご紹介するのは、カカドゥ国立公園中央を流れる川イエローウオーターを船で行く「イエローウオーターリバー・クルーズ」だ。クルーズ船は一列4人掛け×10列。バードウォッチングなどの自然を堪能するにはちょうどいい大きさ。屋根がついているのも、日差しが強い熱帯のクルーズでは助かる。

このイエローウォーターリバークルーズの何よりの楽しみが、バードウォッチング。というのも、このイエローウォーター周辺の湿地帯は、さまざまな野鳥が集まる自然の楽園なのだ。

なにぶん自然相手なので、どの鳥が見られるかは保証はできないが、ここでよく目にする鳥たちをいくつか紹介しよう。

青い羽根がきらびやかなヒメミツユビカワセミ。

コウノトリの仲間の「ジャビルー」(日本名はセイタカコウ)。南米にも同名の鳥がいるが別の種類。体長150センチ、羽を広げた幅は230センチにもなる大型の鳥だ。

ジャビルーは飛ぶ姿も非常に美しい。©Steve Strike/Tourism NT

ずんぐりとした体形のモリツバメ。葉のない枯れ木によくいる。暑い熱帯でも寄り添う姿がなんとも言えない。

白鷺(シラサギ)はこのあたりでよく目にする鳥。真っ白な羽が青空にも夕陽にも映える。

そして「イエローウォーターリバークルーズ」のもうひとつの魅力が、白や紫の「蓮(ハス)」の花の美しさだ。

©Mark Marcelis/Tourism NT

みなさんは「なぜお釈迦様の台座が菊でもバラでもなく蓮の花なのか」と疑問を持ったことはないだろうか。ここに来れば、その理由を一瞬で理解できる。お釈迦様のいる極楽浄土に最も似合う花、それが蓮なのだ、と。

©Peter Eve/Tourism NT

自然の美しさといえば、蓮とともに見逃せないのが水面。木々が見事に写り込み、ボートが移動する刹那ごとに移ろいゆく。その儚さもまた楽園らしい。

©Shaana McNaught/Tourism NT

さて、この地上の楽園をさらに官能的にしているスーパースターにも触れておかなければなるまい。それは、ワニの中でも獰猛と言われるイリエワニである。大きな個体は体長7メートルにも及ぶ。

©Peter Eve/Tourism NT

イエローウォーター周辺はイリエワニの生息地なので、クルーズでほぼ間違いなく目撃できる。

©Peter Eve/Tourism NT

©Ewen Bell/Tourism NT

クルーズの所要時間は1時間半または2時間。充実しているのであっという間だ。

釣り好きならフィッシングツアーも楽しめる。©Shaana McNaught/Tourism NT

イエローリバーでの筆者のオススメは、朝いちばんの早朝クルーズと夕方のクルーズ。いずれも日中に比べて鳥たちの活動が盛んだからだ。

早朝クルーズは朝もやの中の幻想、夕方クルーズはオレンジ色に染まる空と水面というそれぞれ別の絶景が楽しめる。近隣の宿泊施設に宿泊して、夕方クルーズと翌日の早朝クルーズの両者を楽しむことをぜひおすすめしたい。

©Shaana McNaught/Tourism NT

筆者がここを訪れていつも思うのは、「地球最後の日や人生最後の日はここでのんびり過ごしたい」ということ。バードウォッチング好きはもちろん、この世の楽園を見てみたいという方には絶対におすすめの場所だ。

さて次に紹介するのは、広大なマムカラ湿原にある「マムカラ・バードサンクチュアリ」。周辺に生息する数々の水鳥が観察できる、まさに野鳥の楽園だ。

野鳥を観察するなら、湿原の上に設置されたバードウォッチング用の展望デッキからがおすすめ。デッキには屋根がついているので、日差しの強い熱帯のカカドゥでも比較的涼しく観察できる。

先ほどのクルーズではあちこち動き回るが、こちらはじっくり腰を落ち着けての観察が可能。船と違って動かないので、撮影もしやすい。

■カカドゥ国立公園へのアクセス

世界遺産にも指定されているカカドゥ国立公園へは、ノーザンテリトリーの州都ダーウィンからアクセスする。日本からダーウィン国際空港への直行便はないが、オーストラリアの国内のブリスベン、ケアンズ、シドニー、メルボルン、またはシンガポール経由でアクセスすれば乗り換えも一度で済む。

ノーザンテリトリーの州都ダーウィンからの公共交通機関はない。各種ツアーに参加するか、レンタカーで回る。国立公園の入り口までの所要時間は3時間。目的地までは当然それ以上かかる。

ただ、ダーウィンからカカドゥ国立公園に向かうアーネム・ハイウェイは、途中から「速度無制限」となり、100キロ以上のスピードで走る車もある。中央分離帯もない片道一車線道路で、地元の人たちによると「ワニが甲羅干しに出ていることもあって乗り上げることもある」とのこと。

道路脇には、ワニ注意の標識が。

だから筆者としては、レンタカーよりもダーウィン発の数日のツアーに参加することをオススメする。ガイドやドライバーは現地のプロなので安心だし、途中で高さ6メートルにも及ぶアリ塚など、あちこちの見どころに「寄り道」してくれる。3時間の道のりも飽きることはないだろう。

©Peter Eve/Tourism NT

高級なホテルやロッジに宿泊する豪華ツアーから、キャンプ場に置された常設テントに泊まり、キャンプファイヤーを囲んで語り合うバックパッカーツアーまで様々。後者は若者だけではなく、健脚であれば60代くらいの人も多く参加している。「ここでしかできない宿泊体験」をお求めのかたには、ぜひおすすめだ。

■ノーザンテリトリーのベストシーズンは?

もしノーザンテリトリーを訪れるなら、時期は乾季がいい。年によって多少変動するが、だいたい5~10月くらいがベストシーズンとなる。この間は「イエローウォータークルーズ」で浅瀬ができて、そこに集う鳥が見られるし、気温・湿度とも多少は下がるので過ごしやすい。逆に雨季になると、道が水没していけなくなる場所がある。

*  *  *

以上、オーストラリアのノーザンテリトリーにある世界自然遺産「カカドゥ国立公園」の野鳥観察スポットを2つご紹介した。

日本にはけっしてない大自然のパラダイス。日本ではできない雄大な体験。魅力たっぷりのオーストラリア・ノーザンテリトリーを、ぜひあなたの目とカラダで存分に味わっていただきたい。

文・写真(一部)/柳沢有紀夫(オーストラリア在住)
1999年よりオーストラリア在住。『極楽オーストラリアの暮らし方』(山と渓谷社)など著書多数。また2000年に海外在住日本人ライターやカメラマンの組織「海外書き人クラブ」を創設し今もお世話係を務める。

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