文/一乗谷かおり
「猫」を店名に冠したお店ばかりが集まって開かれるユニークな古本市がある。その名も「猫ノフルホン市」。猫好きなら興味を引かれずにはいられないタイトルだろう。
今年(2017年)の開催は、6月10日(土)~25日(日)の約2週間。会場となるのは東京・雑司ヶ谷の住宅街にひっそりと佇む雑貨と古書の店「旅猫雑貨店」だ。
店主の金子佳代子さんに話を伺った。
「ご覧の通りの小さな店舗で開催する小さな古本市なんですが、今年で4回目になります」
きっかけは、各地の古本イベントに参加する古本商の「駄々猫舎」さんの思い付きだった。屋号に「猫」とつく古本屋さんばかりで、古本イベントができないかとあちこちに声をかけたところ、10店舗ほどが名乗りを上げた。
4年目となる今年も、東京、神奈川、岩手、京都、大阪、愛媛などから11店舗ほどの書店が、それぞれ70~100冊ほどの本を出品。普段は民芸品や郷土玩具などであふれかえる雑貨店が、古本屋に変身する。
猫の古本市といっても、基本的には古本屋さんが集まって行なう市なので、猫の本に限らず、様々なジャンルの古書がところ狭しと並べられる。それぞれの店に個性があって、昭和レトロなカバーの古本中心の出店もあれば、少女漫画雑誌の付録を出す店もある。普段、アンテナを張っていないタイプの本との出会いもあるのが、古本市の魅力だ。
そしてもちろん、猫本も。
「店名に猫がつく店ばかりですので、出品される本ももちろん、猫好きの店主のセレクトになります。絵本や小説、実用書など、様々な猫本が集まります。民芸品などの猫雑貨もいつもより多く取り揃えています」
古本市の際には、猫本コーナーが特設される。昨年のレパートリーを見せていただくと、猫の本には常日頃、目を光らせているつもりの筆者も、こんなにもたくさん猫本があるのかと驚くほど。掘り出し物を見つけることもできそうだ。今年はどんな本が各地から届けられるのか、金子さんも今からわくわくしているそう。
読書離れといわれて久しい昨今。ウェブや電子書籍が席巻し、紙の本を買う人も少なくなってきている中で、こうした味わい深い、本への愛に満ちた古本市が、回を重ねるごとにじわじわと注目を集めている。
「本って素敵だな、楽しいなと思っていただけるような古本市にしたいですね」
ノスタルジックな猫の図案の案内ハガキにも、心が躍る。ハガキは、出店者のひとりであり、辞典編纂者で「古書錆猫」代表の後藤沙希さんが手がける。猫好きで、猫の屋号を持つ古本屋主たちが手を取り合って作り上げる、愛すべき古本市なのだ。
今年の初日となる6月10日(土)には、猫毛フェルトで「眠り猫」を作るワークショップも開催される(要予約)。愛猫の毛で作るボール(猫好きの間では「自分玉」と呼ばれる)よりワンステップ上の愛猫グッズを作りたい向きにもおすすめのワークショップだ。
今年は近くの雑司ヶ谷鬼子母神周辺で古本メインのフリーマーケット「鬼子母神通り みちくさ市」も開催される(6月18日開催)。猫ノフルホン市とみちくさ市をハシゴすれば、“猫愛”と“本愛”に浸る散歩を楽しむことができそうだ。
【第肆回 猫ノフルホン市】
■場所:旅猫雑貨店(東京都豊島区雑司ヶ谷2-22-17、電話 03-6907-7715)
■日程:6月10日(土)~6月25日(日)※月曜・火曜休み
■開催時間:12時~19時
■アクセス:東京メトロ副都心線雑司ヶ谷駅から徒歩約5分。都電荒川線鬼子母神前停留所から徒歩約6分。
※肆は四の大字
文/一乗谷かおり