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魚好きな日本の猫が「一番好きな魚」とは何か【にゃんこサライ特別編2】[PR]

文/一乗谷かおり

「猫の好物は鰹節」というのは、昔から日本ではいわば「常識」でした。

江戸時代の浮世絵にも、鰹節と猫をモチーフにした絵が多く描かれています。油断できないことを表す「猫に鰹節」や、片方が得をすればもう片方は損をする意味の「猫が肥えれば鰹節が痩せる」といった猫と鰹節の因果を詠うことわざもあります。

〈其のまま地口猫飼好五十三疋〉

〈其のまま地口猫飼好五十三疋部分〉東海道五十三次の宿駅を、様々なポーズの猫たちと地口(駄洒落)で表した『其のまま地口 猫飼好五十三疋』(歌川国芳画)。出発地点の日本橋は「日本出し」として、藁で縛った鰹節の束から2本を出す(出汁)猫が描かれています。

鰹節ができたのは室町時代といわれていますが、それ以前にも、類似のものはありました。鰹節の源流は堅鰹といって鰹を素干しにしたものでした。弥生時代には既に作られていたことが発掘調査などからわかっています。奈良時代にもなると、朝廷は鰹を水揚げする地を定め、保存加工した鰹とその煎汁を納めさせていました。

奈良時代頃から鼠を捕るために日本に持ち込まれるようになった猫は、やがて愛玩動物としてかわいがられるようになっていきますが、鼠を捕食する以外にも、飼い主から与えられる食べ物も食べていたと思われます。その猫の食べ物の中には、調味料として使った鰹の加工品の残りもあったのではないでしょうか。

猫は鰹節が好き。これはつまるところ、日本人が鰹節が好きだから、といえるかもしれません。

〈百人一首之内 権中納言定家〉歌川国芳によるこの絵には、『百人一首』の選者である藤原定家が帰ってきた猫を愛おしそうに抱き上げており、その前で童が鰹節を包丁で削って用意している様子が描かれています。定家は実際に猫を飼っていました。(足立区立郷土博物館蔵)

■猫にもおふくろの味がある

猫の行動学の研究成果によると、猫はそれぞれの生まれ育った場所で食べているものを好むことがわかっています。イギリスのある島では昔から伝統的に猫にうさぎの肉を与えていたため、その島の猫はうさぎの肉を好むといいます。

各国を渡り歩いて食の研究をした食生態学者の故・西丸震哉さんは、著書『ネコと魚の出会い』の中で、自身の愛猫の変わった嗜好について触れています。人もろくに満足に食べるものがなかった戦争中に生まれたその猫にとっては、幼い頃に食べさせられていたメリケン粉を水で練ったものがおふくろの味だったそうです。戦後、西丸さんの家にもらわれてから、それなりの食べ物を用意してもらっても、台所でメリケン粉を水で溶いているのがわかるとニャン相を変えておねだりをし、おいしそうに食べたといいます。

猫は子供の頃から食べている故郷の味、あるいは「おふくろの味」が好きなのです。

仏教を輸入してからの日本では、長らく獣肉を表立って食べない風習がありました。人間が食べるものの中から猫のごはんも見繕っていたため、日本の猫は魚を食べる機会が多く、結果、魚やその加工品を好むようになったと考えられています。

鰹節以外にも猫の好物として史料に登場する魚介類は、タコ、ドジョウ、タコ、ニシン、サケ、キスなどなど。獣肉を忌んだ日本人でしたが、冬には滋養や保温のため薬食いといって猪や鹿の肉などを食べていましたが、そんな時には猫もありがたく肉を頂いたようです。食べ慣れた味が一番と思っていても、滅多に食べられない御馳走に舌鼓を打つのは、人も猫も同じということは、動物行動学でも証明されています。

■日本の猫が一番好きな魚とは

ところで、魚好きの日本の猫ですが、どの魚が一番お好みなのでしょうか。やはり、鰹なのでしょうか。

前出の西丸さんいわく、「ネコの公約数的好物は魚であり、魚のなかでもアジがいちばん好きだ」とのこと。外国では魚を食べたことさえない猫もたくさんいるはずですが、魚を食べ慣れていなくとも、大半の猫がアジを美味しいと思うとみて間違いないのだと西丸さんは断言しています。

でも、漁獲量が多く、雑魚扱いされた魚です。猫も避ける「猫またぎ」などといわれたほどたくさん獲れた定番中の定番でした。実際にはたいへん美味しい魚で、名前の由来も味がいいからアジです。猫も本当は避けたりなんかしなかったはずです。

果たして、みなさんの飼っている猫の好みは、どうでしょうか?

猫の保護活動をする「わさびちゃんち」で一番の食いしん坊アジア。名前の由来は魚のアジ。熱い視線の先にあるのは…?

文/一乗谷かおり

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