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「事を成さんとするには戦国武士の覚悟を要す」(渋沢栄一)【漱石と明治人のことば126】

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今年2017年は明治の文豪・夏目漱石の生誕150 年。漱石やその周辺、近代日本の出発点となる明治という時代を呼吸した人びとのことばを、一日一語、紹介していきます。

【今日のことば】
「およそ人、この世に処し、事を成さんとするには、須(すべから)く戦国武士の覚悟あるを要す」
--渋沢栄一

渋沢栄一は江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜の家臣だった。もともとは藍商や荒物商も兼ねる裕福な農家の生まれ。知人を介して一橋家に出仕していたところ、主の一橋慶喜が徳川15代将軍となったため、これに付き従って幕臣となったのだ。

その後、慶喜の弟・昭武の随員としてパリの万国博覧会に派遣され、引き続く昭武の欧州留学にも同行。帰国したのは、幕府瓦解直後の明治元年(1868)11月だった。

実業界入りした渋沢は、洋行体験を生かし、第一国立銀行、王子製紙、東京瓦斯など500 余りの会社を起こした。当時の経済界屈指の実力者であり、その気になれば、三井、三菱に匹敵する財閥をつくることも可能だったが、それをしなかった。

事業というものは、社会の多数を益するものでなければならないのであり、子供たちに対しても「わが家には宝として子孫に遺すべきものはない」と言い切っていた。

渋沢の生き方の基底には、武士の魂とでもいうべきものがあった。掲出のことばも、そこから生まれた訓言である。

それは事業をする際も同じ。渋沢は、その著『論語と算盤(そろばん)』の中にはこんなふうに綴っている。

「私は常に士魂商才ということを唱道するのである。(略)人間の世の中に立つには武士的精神の必要であることは無論であるが、しかし武士的精神にのみ偏して商才というものがなければ、経済の上からも自滅を招くようになる、ゆえに士魂にして商才がなければならぬ、(略)その商才というものは、もともとは道徳を以て根底としたものであって、道徳と離れた不道徳、欺瞞、浮華、軽佻の商才は、いわゆる小才子、小悧口であって、決して真の商才ではない」

まことにスケールの大きな実業家であった。

文/矢島裕紀彦
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。著書に『心を癒す漱石の手紙』(小学館文庫)『漱石「こころ」の言葉』(文春新書)『文士の逸品』(文藝春秋)『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)『夏目漱石 100の言葉』(監修/宝島社)などがある。2016年には、『サライ.jp』で夏目漱石の日々の事跡を描く「日めくり漱石」を年間連載した。

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