取材・文/池田充枝

日本には古来、超絶技巧の工芸作品が数多くあります。金襴を惜しげもなく使った能装束や、漆に金で絵画的な表現をした蒔絵作品、さらには高度な技術がなければできない精密な細工がほどこされた陶芸や金属工芸など、まさに技を極めた作品です。これらは絵画や彫刻と同列の価値をもった日本独特の重要な芸術作品です。

近代以降、とくに明治の終り頃から、個人作家としての意識をもち、高度な技術をもった工芸家たちが輩出しました。ことに古くから日本の文化の中心にあった京都では、雅な世界が繰り広げられ衣食住に関連した最高級の品々が生み出されてきました。

一方、ヨーロッパの宝飾品にも、ハイジュエリーと呼ばれる日本の工芸品と同じような珠玉の作品があり、それを作り出す人々はまさに日本での重要無形文化財保持者(人間国宝)といえる人々なのです。

たとえば1906年にパリで創業したフランスを代表するジュエリーメゾン、ヴァン クリーフ&アーペルでも、ハイジュエリー制作の分野では熟練した職人が一子相伝のように技を伝えており、独自のスタイルと創造性に優れた作品を生み出しています。技を極める探求心は、国や時代を超えて共通するものなのでしょう。

《バードクリップ》1924年 ヴァン クリーフ&アーペル コレクション Patric Gries (C)Van Cleef & Arpels

そんな日本の超絶技巧の工芸作品と、フランスのハイジュエリーの作品が一堂に会するユニークな展覧会『技を極める―ヴァン クリーフ&アーペル ハイジュエリーと日本の工芸』が、京都国立近代美術館で開催されています(~8月6日まで)。

本展は、「技を極める」というテーマのもと、フランスのハイジュエリーの秀逸な作品と、日本の工芸作家の作品を組み合わせて展示することによって、フランスと日本の文化交流と融合、未来への新しい視点を探るものです。

ヴァン クリーフ&アーペルのハイジュエリーのデザインや制作技術の変遷が見られる作品約270点と、日本の超絶技巧の七宝や陶芸、漆芸、金工などの工芸作品約70点を比べながら検証します。

四代長谷川美山《京都名所図透彫飾壺》明治—大正時代 京都国立近代美術館蔵 撮影:木村羊一

本展の見どころを、京都国立近代美術館の学芸課長、松原龍一さんにうかがいました。

「ヴァン クリーフ&アーペルのハイジュエリーも、日本の工芸作品も、技を極めた先にできあがった素晴らしい作品です。それらを同じ空間に置くことによって、どのように共鳴するか。想像力をかきたてる展示ができていると思います」

繊細かつ華麗な作品は目の保養になること間違いなしです。ぜひ足をお運びください。

【今日の展覧会】
『技を極める―ヴァン クリーフ&アーペル ハイジュエリーと日本の工芸』
■会期:2017年4月29日(土・祝)~8月6日(日)
■会場:京都国立近代美術館
■住所:京都市左京区岡崎円勝寺町
■電話番号:075・761・4111
■展覧会公式サイト:http://highjewelry.exhn.jp/
■開館時間:9時30分から17時まで、4~6月の金・土曜日は20時まで、7~8月の金・土曜日は21時まで(入館は閉館30分前まで)
■休館日:月曜日(ただし7月17日は開館)、6月13日(火)、7月18日(火)

取材・文/池田充枝

 

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