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「敵を殺すを道徳的なりというのは味方の言語でしかない」(夏目漱石)【漱石と明治人のことば72】

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今年2017年は明治の文豪・夏目漱石の生誕150 年。漱石やその周辺、近代日本の出発点となる明治という時代を呼吸した人びとのことばを、一日一語、紹介していきます。

【今日のことば】
「戦に臨んで敵を殺す、これを道徳的なりというは味方の言語なり。同国人の言語なり」
--夏目漱石

夏目漱石が残したメモ書きをまとめた『ノート』からの引用。漱石はさらに、こう綴った。

「人の国を征服し自国の利益を拡張す、これを道徳の許す行為なりというはその利益を享(う)くる国民よりいう語にして、利益をそがれたる国民よりいえば不道徳なり」

漱石の時代、日本も富国強兵の道を進んでいた。日清、日露というふたつの戦争も経験し、東アジアに権勢を広げつつあった。そんな状況下で漱石が記したこのことばは、時代の先をゆく平和論とも呼ぶべき見解であったといえそうだ。

留学を通して生の西洋体験をした漱石の目には、西洋列強がおこなった植民地支配は蛮行のように見えていたのかもしれない。日露戦争の勝利に浮かれ、ともすると、西洋列強の猿真似をして追随しようとするかの如き自国日本に対しても、漱石は鋭い批評精神を帯して向き合っていた。

だからこそ、小説『三四郎』の中でも、「しかしこれからは日本も段々発展するでしょう」と弁護するように言う三四郎に対して、広田先生は、手厳しくひとこと、「亡びるね」と言い放つのである。

文/矢島裕紀彦
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。著書に『心を癒す漱石の手紙』(小学館文庫)『漱石「こころ」の言葉』(文春新書)『文士の逸品』(文藝春秋)『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)『夏目漱石 100の言葉』(監修/宝島社)などがある。2016年には、『サライ.jp』で夏目漱石の日々の事跡を描く「日めくり漱石」を年間連載した。

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