私たちが日常的に使っているカタカナ英語や和製英語の中には、ネイティブスピーカーには伝わらなかったり、元々の意味とは異なる場合があります。今回は、そのような微妙な言葉の一つ、”aggressive” についてご紹介しようと思います。

目次
“aggressive” の意味とは?
“aggressive” のさまざまな使われ方
正直に話し合うとは?
最後に
“aggressive” の意味とは?
日本語でも使われる「アグレッシブ」には、
否定的な意味の「攻撃的な、挑戦的な、強引な」
肯定的な意味の「積極的な、攻めの姿勢である」
という異なるニュアンスがあります。
アグレッシブな姿勢や、アグレッシブに攻める、など、日本語では特にビジネスやスポーツで、「積極的な」と肯定的に使われることがあります。しかし、英語で、“You are aggressive.”(あなたはアグレッシブですね。)と言うと、「あなたは攻撃的だ」と否定的な意味合いとなります。
『プログレッシブ英和中辞典』(小学館)には、「1 侵略[攻撃]的な,けんか腰の. 2 強引な,押しの強い.3 〈病気が〉進行の早い,悪性の.」と書かれています。

“aggressive” のさまざまな使われ方
“aggressive”という言葉は、文脈によってニュアンスが変わります。以下いくつかの表現をご紹介します。
An aggressive person(ケンカっ早い人)
– He is such an aggressive person that he gets angry over the smallest things.
(彼はちょっとしたことで怒るケンカっ早い人だ。)
Aggressive selling(押し売り販売)
– Many customers dislike aggressive selling tactics.
(多くの客は押し売り販売を嫌う。)
Aggressive war(侵略戦争)
– Aggressive war is often condemned by the international community.
(侵略戦争は国際社会から非難されることが多い。)
Aggressive player(積極的な選手)
– She is an aggressive player who never hesitates to take risks.
(彼女はリスクを恐れず積極的にプレーする選手だ。)
Aggressive exercise(ハードな運動)
– Aggressive exercise without a proper warm-up can lead to injuries.
(適切な準備運動なしでハードな運動をすると怪我につながる。)
このように “aggressive” は、文脈によって異なる意味を持ちます。特に人の態度や行動をさす場面では、意図しない誤解を招かないように気をつけることが大切です。
正直に話し合うとは?
日本では、相手を傷つけまいとする優しさや、自らの心を守る思いから、率直な意見を伝えることにためらいを感じる人が多いように思われます。ときに、意見の否定が、人格そのものを否定されたかのように受け取られることもあるでしょう。
一方、欧米では、白熱した議論の後、和やかに語りあう場面が見られることがあります。けれども時には意見の衝突が人間関係に影を落とすこともあるでしょう。
しかし本来、議論とは互いの考えを深め、理解を広げるためのもの。意見の違いを恐れず、率直に伝え合うことで、より豊かな対話が生まれるのは、どの文化においても大切なことのように思えます。
全米図書賞やピューリッツァー賞を受賞したアメリカの詩人、メアリー・オリバーは、2019年に惜しまれつつこの世を去りました。彼女は日々散策し、自然からインスピレーションを得てことばを紡ぎました。彼女の詩をひとつご紹介します。

野生の雁(メアリー・オリバー)
いい人でなくてもいい
悔恨の念にかられ、這いつくばって
果てしない砂漠の道を歩き続けなくていい
ただ、あなたの内にあるやわらかな生きものを
そのまま愛すればいい
あなたの絶望を聞かせてください
私のことも語りましょう
そうしている間も世界は動き
太陽や透明な雨のしずくは大地を渡り
草原や森林を越えて
山や川へと移ろってゆく
そして、野生の雁は碧く澄みわたる空を翔け
ふたたび帰るべき場所へと戻ってゆく
あなたが誰であろうと、どれほど孤独であろうと
世界は、あなたの想像力に委ねられている
荒々しくも心躍る野生の雁のように
なんどもなんども居場所を告げる
あなたはこの大いなるつながりの中にいるとWild Geese Mary Oliver
出典 Wild Geese ~Selected Poems Mary Oliver 著 Bloodaxe Books Ltd. 2004年刊
You do not have to be good.
You do not have to walk on your knees
for a hundred miles through the desert, repenting.
You only have to let the soft animal of your body
love what it loves.
Tell me about despair, yours, and I will tell you mine.
Meanwhile the world goes on.
Meanwhile the sun and the clear pebbles of the rain
are moving across the landscapes,
over the prairies and the deep trees,
the mountains and the rivers.
Meanwhile the wild geese, high in the clean blue air,
are heading home again.
Whoever you are, no matter how lonely,
the world offers itself to your imagination,
calls to you like the wild geese, harsh and exciting–
over and over announcing your place
in the family of things.
最後に
メアリー・オリバーの詩は、私たちが大いなる自然の一部であること伝えています。あるがままの自分を受け入れ、世界とのつながりを感じる。それは、他者との対話においても同じなのかもしれません。
“aggressive” のように、ことばは文脈によってさまざまな表情を見せます。誰かを攻めるのではなく、自らの可能性を広げるために、自分に対して積極的な “aggressive” でありたいと思います。
次回もお楽しみに。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com
