サライ世代にとって、英語は憧れの言語。格好良さ、スマートさの象徴的言語と表現してもいいのではないでしょうか。たとえば、日本語で表現するとどこか野暮ったさを感じる言葉も、英語で表現すると妙に賢く聞こえる時があります。難しい英単語を自慢げに使ったこともありますよね。ところが、間違った使い方をして、後から恥ずかしい思いをしたこともあったり……。そんな青春時代の思い出が、誰にでも一つや二つあるのではないでしょうか?

今回は学生時代に覚えた単語が並ぶ、英語のことわざ「Speak of the devil.」をご紹介いたします。

目次
「Speak of the devil.」の意味は?
「Speak of the devil. 」に似た表現は世界中にみられる
「Speak of the devil. 」とユーモア
最後に

「Speak of the devil.」の意味は?

「Speak of the devil.」を直訳すると「悪魔といえば」ですが……、

正解は……
「噂をすれば(現れる)」という意味の英語表現です。

『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)では、「うわさをすれば影がさす(諺)」と説明されています。

このフレーズは、ちょうど話題にしていた人が偶然現れたときなどに使われます。また、雨の話をしていたら急に降ってきたり、珍しいお菓子の話をしていたらちょうど店に並んでいたときなど、タイミングよく関連する事が起こったときにも使われるでしょう。

もともと、この言い回しは「Speak of the devil and he shall appear.」(悪魔の話をすれば悪魔が現れる)という表現に由来しています。中世のイギリスでは、悪魔やサタンの名を口にすると、実際に呼び寄せてしまうと信じられていました。そのため、このフレーズは、当初戒めとして使われていたようです。

しかし、時代を経て、今ではユーモアを交えて日常的に使われています。

「Speak of the devil. 」に似た表現は世界中にみられる

「Speak of the devil. 」と同じようなフレーズは多くの文化でみられます。興味深いのは、総じて「人の噂をすると、危険な人物やキャラクターが現れる」という共通点があることです。

たとえば、スウェーデン語では、「När man talar om trollen så står de i farstun.」(トロールといえば、廊下にいるよ)。スペイン語では、「Hablando del rey de Roma, por la puerta asoma.」(ローマ王の話をしていたら、ドアから姿をのぞかせる)。

中国語では、「说曹操、曹操就到。」(曹操の噂話をすると曹操が現れる)と言います。曹操は、『三国志』で冷たい悪役として描かれており情報収集に優れていました。また、足が早かったという説もあります。最近は悪役として人気があるようですね。誰かが悪口を言ったら曹操はすぐに現れたという逸話に由来しています。

一方、トルコ語では、「It’i an, çomağı hazırla」(犬のことを言うなら棒を準備しないといけない)と 少々ネガティブなニュアンスで表現されています。

友人のジャワ舞踊家の佐久間新さんとウィヤンタリさんご夫妻に、インドネシア語にも似た表現があるか尋ねてみました。ジャワ舞踊やガムランにはじまり、インドネシアの伝統文化とその言語に造詣の深いお二人です。

興味深いことに、インドネシアでは話していた人が偶然現れた時、「Panjang umur!」(すごいね、あなたは長生きするよ!)と言うそうです。この言い回しが持つ温かさと、聞いた人がうれしくなるような表現に思わず笑ってしまいました。

「Speak of the devil. 」とユーモア

世界の神話や民話には、機転を発揮して、強大な敵や厄介な状況を見事に切り抜けるキャラクターが登場します。権力に抗えない状況でも、知恵とユーモアで不条理な世の中を笑い飛ばす庶民の力が、小さな日常の場面にちりばめられているように思います。

アフリカの民話に登場するトリックスター「アナンシ」は、小さなクモですが、大きな動物たちを出し抜く知恵者です。日本にも吉四六さんの頓知や「和尚と小僧」の和尚をやり込める民話など、権威や権力を笑いで乗り越える物語がありますね。

ささいな言葉やフレーズに潜むちょっとしたユーモアは、時に日々のストレスを和らげ心を軽くしてくれます。

最後に

「噂をすれば影をさす」という日本語の表現は、滑稽本の作家、十返舎一九の『東海道中膝栗毛』に由来するとされています。ユーモアの大家であった彼が描いた物語は、人間の哀しみとおかしみが巧みに織り交ぜられており、今読んでも新しく感じられます。

「Speak of the devil.」(噂をすれば)という言葉のように、私たちは物語や言葉を通して、困難に立ち向かう勇気や日々の生活を楽しむためのヒントを見つけているのかもしれません。次回もお楽しみに!

●執筆/池上カノ

日々の暮らしやアートなどをトピックとして取り上げ、 対話やコンテンツに重点をおく英語学習を提案。『英語教室』主宰。  京都祇園にある建仁寺塔頭両足院をベースに、ひとつのテーマについて英語で語りあう『うごく哲学』を対面とオンラインで定期開催。その他、他言語を通して、それぞれが自分と出会っていく楽しさや喜びを体感できるワークショップやイベントを多数企画。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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