取材・文/鈴木拓也

介護ジャーナリストの牛越博文さんによる、介護離職を防ぐための基本のキの第2弾。【前編】では、介護が始まるまでの手順や必要な知識について話していただいた。
後編では、今の仕事と介護をどうやって両立させるかをうかがった。
介護の環境整備は勤務先の義務
――仕事を辞めて介護に専念する人は、毎年約10万人もいます。その少なからずは、両立させる制度を知らないばかりに、不本意な介護離職になっています。では、具体的にどんな制度があるのでしょうか?
牛越博文さん(以下、牛越):育児・介護休業法によって、勤務先は、介護と仕事が両立できるよう環境整備することが求められています。整備というのは、相談体制を作る、研修を実施する、事例集を提供する、制度の利用促進周知のいずれかです。また、介護離職防止のための個別の周知・意向確認等も義務付けられました。
40歳前後になったら、勤務先から介護保険や社内制度について説明があるでしょう。その際に不明点を聞くようにします。ただ、どの特養がおすすめかといった細かい点までは、答えられないと思います。
また、勤務先は、求めに応じて介護休暇や介護休業を取れるようにしなくてはいけません。ここが、育児・介護休業法の肝心な点です。

介護休業で最大93日休める
――介護休暇や介護休業の活用で、どれぐらい休日を取れるのでしょうか?
牛越:介護休暇は、介護の対象となる人が1人であれば年5日、2人以上なら年10日まで取得できる制度です。
5日や10日連続ではなくて、1日単位、1時間単位で細切れに取得できます。病院の付き添いとかケアマネとの打ち合わせには、これを使うと便利です。
介護休業はずっと長くなり、通算93日、つまり3か月まで休めるものです。93日連続とせず、3回まで分割して取得することもできます。
どちらも、有給休暇扱いとならず、給料は出ないことに注意してください。そのため、残っている有給休暇からまず消化するのがよいでしょう。
また、給料は出ないと言っても、国から介護休業給付が最大93日分支給されます。額は、給料の67%となります。これについては基本的には、勤務先が手続きしてくれますので、ご自身がそのために動く必要はありません。
くわえて、企業が独自に設けている制度がありますし、短時間勤務や在宅勤務が可能であれば、活用を検討しましょう。
要介護1でも介護休業が取れることも
――長期にわたる介護休業を取るための要件はありますか?
牛越:要介護2以上であれば要件を満たします。ですが、要介護1でも、歩行が難しいとか、意思の伝達が時々困難になるなど、見守りが必要なケースは多いです。その場合、そうした状態がいくつか当てはまれば、要件を満たせます。
勤務先は、休んでいる間の給料を出す必要はないし、休業の申し出を渋ることはないはずです。育児・介護休業法は、休業をするからと不利益な取り扱いをしてはならないと定めています。一足飛びに介護離職を考えるのではなく、まずは安心して休業しましょう。
介護は長丁場という前提で
――監修された『介護離職しない! 介護で仕事を辞めないための本』には、介護をしている期間の平均は4年7か月に及ぶとあります。休暇や休業では、とてもカバーできない場合、どうすべきでしょうか?
牛越:平均ということは、それよりずっと長い人もいるわけです。私が知る限りでは、高齢の女性だと、要介護状態が20年を超えることも稀ではありません。
だから、後先考えずに離職して介護にあたるというのは、思いとどまるべきです。遠隔か同居かにかかわらず、要介護3であれば、特養に早めに入れることを検討してください。
要介護1~2では特養は入れませんが、介護負担が大きいなら、割安なケアハウスや老人ホームを探しましょう。最初から安いところを選ぶことに、気後れしないでください。
なにより大事なのは、ご自身が常時介護にあたるという発想をやめることです。在宅勤務制度などは活用しつつも、できるだけ介護のプロに頼むようにします。
親族で協力しながら介護にあたる
――お話をうかがっていて、介護そのものだけでなく、お金の面でも1人でどうこうとせず、兄弟、親族のバックアップも大事だと思いました。
牛越:そのとおりです。まず、介護にかかる費用は、できるだけ親の年金や資産から捻出するようにしましょう。ですが、親が自営業で国民年金だと額は小さい。それで、兄弟・親戚との間で、「お金をどうするんだ。誰が面倒見るんだ」と、揉めることはよくあります。
子が1人で介護を支えるのは、厳しいのは事実です。介護が始まるよりずっと前から、親族間で良好な関係性を保ち、いざという場合に備えて話し合っておくことをおすすめします。
お話をうかがった方:牛越博文さん
介護ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部を卒業後、日本生命保険相互会社に入社。海外駐在中に介護関連の調査に携わる。厚生労働省所管(当時)の研究機構で介護保険制度の調査業務を担当するなど活躍し、いくつかのキャリアチェンジを経て、現在はオートル・モンド・インスティテゥート代表を務める。著書・監修書に『介護保険のしくみ』(日本経済新聞社)、『未来病院プロジェクト―生き残るための経営知識・診療報酬改定への対応』(中央経済社)など多数。監修を務めた最新の書籍は『介護離職しない! 介護で仕事を辞めないための本』(Gakken https://hon.gakken.jp/book/2080268500)。

お金・制度・休み方がよくわかる』
監修:牛越博文
1980円
Gakken
取材・文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。











