江戸時代の人権

I:さて、『べらぼう』は、吉原の女郎の生き様に焦点があてられた初めての大河ドラマになっています。第1回では、病死した女郎がお寺の境内に打ち捨てらたような場面も描かれました。第8回では、上位の女郎である瀬川でさえ、体力をつかう難儀な客に対処せざるを得ない現実が描かれました。
A:彼女たちに客を選択することはなかなかできないですからね。借金のかたで吉原にきた女郎たちに、現代でいうところの「人権」などほとんどなかったと思われます。なにせ「切り捨て御免」が許されていた社会ですから。
I:「切り捨て御免」といえば、武士に無礼をはたらいた町人を切り捨ててもお咎めなしという制度ですね。「手討ち」とも「打ち捨て」ともいわれていたそうですね。
A:届け出が必要だったのですが、それなりに事例があったようです。明治になって廃止されるまで存続した制度ですが、現代の感覚でいえば「人権」などなかったということになるのでしょう。
I:そのあたりの機微については、例によって女郎の思いを書き遺した史料というのはほとんどありませんから、推測するしかないわけです。「悪所」「苦界」と称された吉原で病気になったら、それこそ打ち捨てられる。それでも必死で生き抜こうとした女郎たち。そんな過酷な歴史があったことはしっかり記憶にとどめておきたいですね。
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