最近、パソコンやスマートフォンの普及により、⾃ら字を書く機会はめっきり減少してきました。その影響からか「読める、けれども、いざ書こうとすると書けない漢字」が増えていませんか? 以前はすらすらと書けていたのに、と書く⼒が衰えたと実感することもあります。
「脳トレ漢字」の記事を読みながら漢字の読み書きをすることで、脳のトレーニングとなります。また、この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能⼒を⾼く保つことにお役⽴てください。
今回の「脳トレ漢字」は、「凋落」をご紹介します。よく見かける言葉ですが、誤って読まれていることが多いです。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。

「凋落」とは何とよむ?
「凋落」の読み方をご存知でしょうか? 「しゅうらく」ではなく……
正解は……
「ちょうらく」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「花や葉がしぼんで落ちること。」「おちぶれること。」と説明されています。栄えていたものが衰えていく様子を表し、「一族が凋落する」「一大ブームが凋落しつつある」などのように使われます。
また、容姿が衰えることや、人が衰えて死ぬことを意味する場合もあるそうです。
「凋落」の漢字の由来は?
「凋」という漢字には、「草木がしなびる」「やつれる」という意味が含まれ、「落」は「木の葉がおちること」を意味します。そのため、この二文字が組み合わさることで、「衰える」「おちぶれる」という意味を持つ言葉が生まれたと考えられます。
「諸行無常」が題材の百人一首

「凋落」には「おちぶれる」「衰える」という意味があり、「諸行無常」の意味に類似しているといえます。諸行無常が題材の作品といえば、「祇園精舎の鐘の声」で知られる『平家物語』がありますが、百人一首にも題材を同じくする和歌があります。
それが、「花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに」という和歌です。これは、三十六歌仙の一人・小野小町が詠んだ歌で、現代語訳すると「花の色は、春の長雨が降っているうちに色あせてしまった。物思いに耽っている間に、私の美貌が衰えてしまったように。」という意味になります。
見頃が過ぎた花と、年老いた自分自身を重ねているこの和歌からは、人生の儚さを感じ取ることができます。伝説の美女として、現在でも広く知られている小野小町。彼女のその後については詳しく分かっていませんが、一説では各地を転々とする晩年を過ごしていたと言われています。
周囲から一目置かれるほどの才色兼備であったからこそ、衰えていく自分自身を辛く思う気持ちも人一倍強かったのかもしれません。
***
いかがでしたか? 今回の「凋落」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 百人一首には、現代を生きる私たちでも共感できるものが多く、知れば知るほど奥深いですね。
恋愛以外を題材とした和歌も複数あるため、お気に入りの一首を探してみてください。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB
参考資料/『デジタル大辞泉』(小学館)
『日本国語大辞典』(小学館)
『日本大百科全書』(小学館)
