最近、パソコンやスマートフォンの普及により、⾃ら字を書く機会はめっきり減少してきました。その影響からか「読める、けれども、いざ書こうとすると書けない漢字」が増えていませんか? 以前はすらすらと書けていたのに、と書く⼒が衰えたと実感することもあります。

「脳トレ漢字」の記事を読みながら漢字の読み書きをすることで、脳のトレーニングとなります。また、この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能⼒を⾼く保つことにお役⽴てください。

「脳トレ漢字」第218回は、「忌引」をご紹介します。漢字を見ると何となく意味が分かりますが、読み方は少し難しいかもしれません。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。

「忌引」とは何とよむ?

「忌引」の読み方をご存知でしょうか? 「いみびき」ではなく……

正解は……
「きびき」です。

『小学館デジタル大辞泉』では、「近親者の死のため、勤めや学校を休んで喪に服すること。また、そのための休暇。」と説明されています。親族が亡くなった際に使われる、忌引。法律で明確に定義されているわけではありませんが、多くの企業で忌引休暇に関する規則が定められています。

企業によっても異なりますが、配偶者の場合はおよそ10日、一親等(本人・配偶者の父母、子ども)の場合は3日~7日、二親等(本人・配偶者の祖父母、兄弟姉妹)の場合は1日〜3日の休暇日数が一般的であるようです。

「忌引」の漢字の構成は?

「忌中」や「忌避」という言葉にも使われている、「忌」。憎んだり恐れたりする心を表しているとされるこの漢字には、「避ける」「嫌う」という意味が含まれます。そして、「引」という漢字には「ひっこむ」という意味が含まれているそうです。

二つの漢字を組み合わせることで、「喪に服す期間」という言葉の意味が生まれたのかもしれません。

「服忌令」とは?

親族が亡くなった際、喪に服することを意味する「忌引」。この期間が過ぎて、通常の生活に戻った後も、一定期間はハレの行事への参加を控えるのが一般的とされています。これを「服忌(ぶくき/ぶっき)」または「忌服(きぶく)」といい、故人への哀悼を捧げ、穢れを祓う期間であると考えられてきました。

服忌に関しては、中世に伊勢神宮をはじめ、各神社で法令が作成されていましたが、これらをもとに「服忌令(ぶっきりょう)」を制定したのが、江戸幕府5代将軍・徳川綱吉(つなよし)であるとされます。

綱吉は、貞享元年(1684)、儒学者の林鳳岡(はやし ほうこう)や木下順庵(きのした じゅんあん)、神道家の吉川惟足(よしかわ これたり)らとともに法令を作成しました。その後、複数回改正され、元文元年(1736)に確定したそうです。

服忌令では、忌の期間中は門を閉じて出仕しないこと・神社へ参詣しないこと・魚肉を食べないこと・髪や髭(ひげ)を剃らないことなど、細かく明記されていました。この法令は明治維新まで用いられ、戦前まではこれを改正したものが用いられていました。

法令として定められているわけではないものの、服忌の慣例は現在でも広く浸透しているといえます。

***

いかがでしたか? 今回の「忌引」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 現在でも、喪中には新年の挨拶や神社への参詣を控えるべきとされますが、綱吉の時代には既にこうした風習が広まっていたといえます。

喪に関する歴史を調べてみると、日本人の「死」に対する考え方や倫理観を垣間見ることができますね。

文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB

参考資料/『デジタル大辞泉』(小学館)
『日本国語大辞典』(小学館)
『世界大百科事典』(平凡社)

 

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