みなさんは、これまでどのように英語を学習されてきたでしょうか? 好むと好まざるとに関わらず、10年以上の学習を経ても、英語で心地よく会話できる人はどれほどいるでしょう? 今では、幼児の頃からさまざまな場面で英語と触れ合い、肩肘張らずに会話を楽しむ若者をみかけます。こうした時代の変化を踏まえ、私たち大人も、せめて「使えるフレーズ」を一つ二つ身につけておきたいものです。
今回は、そのようなフレーズの中から、「bite off more than you can chew」を取り上げてみたいと思います。
目次
「「bite off more than you can chew」の意味は?
「bite off more than you can chew」の由来は?
「bite off more than you can chew」ってどんなこと?
最後に Don’t bite off more than you can chew (自分ができる以上のことはしないでね。)
「bite off more than you can chew」の意味は?
さて、今回紹介するのは「bite off more than you can chew」です。
「bite off more than you can chew」を直訳すると、「bite off」は(噛み切る)「chew」は(よく噛む、咀嚼する)、ですが……、そこから転じて
正解は……
「自分の能力以上のことをやろうとする、大それたことをする」という意味になります。
『Oxford Advanced Learner’s Dictionary』(Oxford University Press)には、「to try to do too much, or sth(something) that is too difficult」(無理をしすぎる、または、難しすぎることをしようとすること)と書かれています。
無理をしたり、背伸びしすぎる状況を指しています。
たとえば、
It feels like I bit off more than I could chew when I promised to complete this work in one day.
(この仕事を一日で終えてしまうと約束したのは、無理してしまったな。)
などと使います。
「bite off more than you can chew」の由来は?
「bite off more than you can chew」というフレーズが最初に使われたのは、19世紀のアメリカで噛みタバコが流行していた時代にさかのぼります。当時、タバコの葉を固めた塊(plug tobbacco)を噛み、唾液を吐き出しながら楽しむという習慣がありました。性別年齢を問わず流行したこの噛みタバコの大きな塊を口にして「噛み切れないほど噛んだ」と表現したことが、この慣用句の起源になったといわれています。
また、別の語源として、明代の中国の作家、凌濛初の短編小説『初刻拍案驚奇 (驚いて食卓を叩く)』にも同じような表現が見られます。この物語には、食べ物を噛み切れないほど口の中に詰め込む子どもたちの姿が描かれています。
いずれにしても、このフレーズは、「自分の能力以上のことをやろうとする」ことへの戒めとして、生活に息づいた表現として使われてきました。
「bite off more than you can chew」ってどんなこと?
ドイツの作家ミヒャエル・エンデの『モモ』という児童文学作品があります。主人公モモの大切な友人の一人に道路掃除夫のベッポがいます。彼は、夜明け前の静けさの中、ゆっくりとていねいに、一歩ずつ進みながら道路を掃きます。一歩進んではほうきを動かし、ひと呼吸。そしてつぎの一歩を進む、掃く、そして呼吸する。
ベッポはモモに、果てしなく長い道の掃除に心が折れそうになることがあると話します。しかし、そんなときは道全体ではなく、目の前の一歩、ひと掃き、ひと呼吸だけを考える。すると、たのしくなってくると語ります。
私たちも、目の前に広がる数多くの仕事や日常のあれこれに圧倒されてしまうことがあるかもしれません。けれど、無理に大きすぎる一口を詰め込もうとするのでなく、一口ずつゆっくり噛んでみる。目の前の仕事にひとつずつ向かってみるのはどうでしょう。もしかしたら、ベッポの言うように、その仕事が少しずつ楽しくなり、気づかないうちにひとつ仕事ができていた、などということがあるかもしれません。
最後に|Don’t bite off more than you can chew .(できる以上のことはしない)
日々、仕事や家事、子育て、介護、そして病気といった多くの出来事に追われ、戸惑うことがあります。理想が叶わず焦りや苛立ちを感じることもあるでしょう。そんなとき、まずは目の前の小さな一歩を踏み出してみる。そこから次の一歩へつながるとき、もしかしたらベッポの言うように、楽しくなっていくのかもしれません。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com