敦明親王と敦康親王
I:さて、貴族の最大の関心事といえば、人事=除目だったともいわれます。
A:現代でも人事が最大の関心事という組織がありますが、平安貴族たちのそれは命がけといってもいいほどの熾烈な争いでもあったようです。
I:藤原氏の歴史を振り返ると、いろいろな事件があったことがわかります。そうした中で、一条天皇(演・塩野瑛久)の第一皇子だったにもかかわらず、皇位を継承することができなかった敦康親王(演・片岡千之助)が若くして世を去らざるを得なかったのは、平安朝の悲劇のひとつです。
A:正式に立后した后が生んだ第一皇子が皇位を継承できなかったのは異例のことでした。前週に三条天皇(演・木村達成)の第一皇子で東宮(皇太子)だった敦明親王(演・阿佐辰美)が東宮を辞退したことが描かれました。
I:敦明親王と敦康親王は「ブラック道長」の犠牲者といっていいのでしょうか。
A:単に道長が最終的に頂点になったのでそう見られがちですが、道長がやらねばほかの誰かが対峙してきたというだけで、誰も安閑としていられなかったのが平安時代ということではないでしょうか。
頼通と隆姫女王のこと
I:道長嫡男頼通は、正妻で具平(ともひら)親王の女王である隆姫女王(演・田中日奈子)と睦まじい関係を築き、子が生まれないことから、二妻を持つことを勧める周囲に反抗している様子が描かれています。
A:バックボーンはやや異なりますが、源実朝も正妻と睦まじくて、側室を持つことを拒みました。源氏の血統を自分の代で絶やしたいという考えだったともいわれますが、頼通にしても実朝にしても、その後の歴史に大きな影響を与えました。
I:是非はともかく、現代的な感覚からすると、ひとりの女性を愛するというのは素敵というか、あってしかるべきこと、という風になりますよね。このドラマでは道長はまひろだけを思っているわけですけど。
A:まあ、現代的な感覚はともかく、頼通の純愛が歴史にどう影響したかを追跡するのも一興かと思います。
【ほんとに剃髪した「道長」。次ページに続きます】