開業以来、多様な利用客の足となってきた東海道新幹線のサービスも、そのニーズや世相を映して変化してきた。東海道新幹線の最新のサービスを紹介する。
座席からコーヒーや軽食が注文できる 東海道新幹線モバイルオーダーサービス
モバイル端末の普及に伴う新しい取り組みとして2023年11月から開始。東京〜新大阪間を走行する列車のグリーン車(「こだま」を除く)で、座席に備え付けられた案内リーフレットに表示されているQRコードをスマートフォン等のモバイル端末で読み取り、座席に居ながら飲み物や軽食等が注文できる仕組み。
これまでのように、ワゴン販売が自席のそばまでやってくるのを今か今かと待つ必要がなく、商品もじっくり選ぶことが可能だ。支払いは、現金か交通系ICカードが利用できる。
また、尋ねたいことなどがあれば、同様にQRコードの読み取りから乗務員を呼び出せる「東海道新幹線サポートコールサービス」もある。静かで快適な車内環境を求める利用客の声に応えたこれらのサービスは、グリーン車の新しい試みとして注目されている。
仕事がはかどる S Work 車両
東海道新幹線の車両には、ビジネスマンの利用を想定した「S Work車両」(7号車)が設定されている。ノートパソコンを用いた車内での作業時の利便性を考慮した「S Work Pシート」は、一部の3人掛け座席の真ん中(B席)にパーティション(仕切り)を設置し、両側のA、C席の利用客の作業スペースをより広く確保している。
また、最新のN700S車両の7号車には同車両の利用客限定の「ビジネスブース」(個室)があり、10分単位で一回あたり最長60分まで利用可能。「S Work車両」の座席やブース内の端末に表示されているQRコードを読み込むことで予約できる。
「S Work Pシート」は普通車指定席の料金に1200円の追加で利用可能。なお、ビジネスブースの料金の支払いはクレジットカードのみ。
ホームで挽きたて淹れたてのコーヒーが購入できる
かつて車内のワゴン販売の定番商品だったコーヒーとアイスクリームは、「のぞみ」停車駅のホーム上等の自販機で購入できる。銘柄は「新幹線のぞみブレンド」「新幹線ひかりブレンド」「新幹線こだまブレンド」「ドクターイエローブレンド」など4種のほか、アイスココア、アイスチョコバナナなどがバラエティ豊かに揃う。
コーヒーの価格は標準サイズの「ビッグ」が300円、大きめの「ジャンボ」が350円など。注文を受けてから豆が挽かれ、抽出中の様子がリアルタイムで自販機上部のモニターに映し出される。注文から抽出完了まで最長で95秒かかる場合もあり、発車間際に利用する際は注意したい。
また、ワゴン販売で人気の高かったアイスクリームは、人気のバニラをはじめ最大で11種の商品が揃い、コーヒー同様に充実したラインナップとなった。
2026年度に個室が登場予定
東海道新幹線の一部の車両(N700S)に個室の座席が導入される予定だ。リクライニングや足を伸ばしてくつろげるレッグレストの機能を備えた座席が設置され照明の明るさや空調の風量、車内放送の音量も調節できる室内となる見込み。広さは1人〜2人用。料金等は未定。
東海道新幹線には1985年〜2003年に1人用〜4人用の個室が設けられ、多様なニーズに対応していた。個室の再登場は、利用客全体にとって東海道新幹線の新たな魅力となるに違いない。
取材・文/中村雅和 写真提供/JR東海(特記以外)