最近、パソコンやスマートフォンの普及により、⾃ら字を書く機会はめっきり減少してきました。その影響からか「読める、けれども、いざ書こうとすると書けない漢字」が増えていませんか? 以前はすらすらと書けていたのに、と書く⼒が衰えたと実感することもあります。

脳トレ漢字の記事を読みながら漢字の読み書きをすることで、脳のトレーニングとなります。また、この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能⼒を⾼く保つことにお役⽴てください。

「脳トレ漢字」第201回は、「項」をご紹介します。「こう」とも読みますが、この漢字一文字で体のある部位を表します。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。

「項」とは何とよむ?

「項」の読み方をご存知でしょうか? 「こう」とも読みますが……

正解は……
「うなじ」です。

『小学館デジタル大辞泉』では、「首の後ろ。襟首。」と説明されています。「うなじ」という言葉は大変古く、奈良時代に成立した『日本書紀』の中でも、記述が見られます。「うなづく」や「うなだれる」という表現にもある通り、「うな」という言葉は「首」を意味すると考えられているのです。

また、かつては「うなぜ」と呼ばれることもあったそうです。

「項」の漢字の由来は?

「項」という漢字には、「首筋」という意味が含まれるそうです。元々は、「項(うな)」と読まれていたものが、首の後ろという意味の「項後(うなじり)」が転じて、今の読み方になったと言われることもあります。

髪型の変遷

女性の魅力的な部位の一つとして、項を挙げられることも多いでしょう。実際に、項を綺麗に見せるためにシェービングしたり、保湿したりしている方もいらっしゃるのではないでしょうか? 項が注目されるようになったのは、江戸時代に入ってからであると考えられています。

かつて、黒髪や長い髪は美の象徴でした。平安時代以降、高貴な婦人たちは、美しい黒髪をアピールするため髪を伸ばしていました。この頃、貴族女性の髪の長さは、自分の身丈よりも30センチメートル長いのが普通だったそうです。

しかし、時代の中心が貴族から武士へと移り変わると、女性の髪型も変遷します。鎌倉時代に入ると、長髪の地毛をもつ者が少なくなり、長髪を結うための仮髪 (かはつ/かつらのこと)が必要になったといいます。安土桃山時代には、髪を輪にまとめて後頭部で留める唐輪(からわ)という結い方が生まれました。

江戸時代になると、さらにバリエーションは増え、女性の髪の結い方は明治初年にかけて280余種にも及んだそうです。髪を結う際、髪型と同じく重視されたのが「項」でした。

現在でも、女性は着物を着る際に衣紋(えもん)を抜いて、項を見せることがあります。これは、江戸時代に定着した文化であるとされます。髪型をより美しく際立たせるため、江戸時代の女性は項の手入れも欠かさなかったのです。

当時は、色白が美人の条件だったため、顔だけでなく項や胸元にも白粉をたっぷりと塗り込んでいました。項の白粉の塗り方にも種類があったとされ、文化10年(1813)には、項を美しく見せる化粧法などが紹介された『都風俗化粧伝』という女性の身だしなみの本が刊行されています。

女性が合わせ鏡をして項を確認する浮世絵も多数描かれていることから、当時も項の人気は高かったのかもしれません。

***

いかがでしたか? 今回の「項」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 今も昔も、綺麗な項は人の目を惹くのかもしれませんね。江戸時代は、現代まで続く文化がたくさん生まれた時代でもあるため、ほかにも調べていただくと、意外な発見ができるのではないでしょうか?

文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB

参考資料/『デジタル大辞泉』(小学館)
『日本大百科全書』(小学館)
『東洋文庫 都風俗化粧伝』(平凡社)

 

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