七殿五舎を覚えておこう
I:ところで、まひろが出仕した場所の「藤壺」ですが、内裏の中にある「七殿五舎」と呼ばれる天皇のお妃などが住まう殿舎のひとつということになります。正式には飛香舎(ひぎょうしゃ)といって、庭に藤の花が植えられていたので「藤壺」と称されていたということですね。
A:この機会に「七殿五舎」を覚えると、よりこの時代の情景が面白くなると思います。改めて列挙すると、「弘徽殿(こきでん)」「承香殿(じょうこうでん)」「麗景殿(れいけいでん)」「登華殿(とうかでん)」「貞観殿(じょうがんでん)俗に御匣殿(みくしげとの)とも」「宣耀殿(せんようでん)」「常寧殿(じょうねいでん)」の七殿。弘徽殿や承香殿の格式が高かったようです。
I:『源氏物語』にも「弘徽殿の女御」が登場しますね。そして、五舎は、中宮彰子が住まう飛香舎(ひぎょうしゃ/藤壺)、かつて円融天皇(演・坂東巳之助)の女御だった藤原詮子(東三条院/演・吉田羊)が住まった凝花舎(ぎょうかしゃ/梅壺)、さらには昭陽舎(しょうようしゃ/梨壺)、淑景舎(しげいしゃ/桐壺)、襲芳舎(しゅうほうしゃ)などの殿舎が連なっていたようです。『源氏物語』巻頭を飾る桐壺は淑景舎っていうのですね。それにしても、藤や梅、梨などが庭に植えられていたとは華やかですよね。
I:さて、藤壺ですが、女房だけでも40人くらいいるわけですから、年代が一律ではないにせよ学校の1クラスのようなもの。仲のよい友ができたり、どうにも相性が合わない人がいたり、まひろの父の官位が低いことを蔑む人もいたでしょう。
A:人生の中では一度や二度、完全アウェーな場、完璧に場違いなところに分け入らざるを得ないことがあります。そういう時に、どう対処するのか。まひろの気持ちになって視聴するとドキドキするかもしれません。
I:『紫式部日記』には女房の面々とのさまざまなエピソードがちりばめられています。「まひろ、がんばって!」と声高に叫んで、次週を待ちたいと思います。
A:ここは制作陣の腕の見せ所。人間社会の縮図がどう描かれるのか。要注目ですね。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり