正しい意味を理解し、適切に漢字が使えているのか、疑問を感じることが増えていませんか? 適当に漢字を使ってしまい、気付かないところで「恥をかいている」ということがあるかもしれませんね。
Google 先生やデジタルデバイスの出現により、便利になった反面、情報の中⾝については⼗分な吟味が必要な時代になっております。あなたの“漢字の知識”は確かでしょうか? もう⼀度、確認しておいても良いかもしれません。
「脳トレ漢字」第177回は、「面影」をご紹介します。ある人のことを思い浮かべるという意味として使われる「面影」。実は、植物の名前にも使われているのです。漢字への造詣を深めてみてください。
「面影」とは何とよむ?
「面影」の読み方をご存知でしょうか? 「めんかげ」ではなく……
正解は……
「おもかげ」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「記憶によって心に思い浮かべる顔や姿」「あるものを思い起こさせる顔つき、ようす」と説明されています。「亡き父の面影をしのぶ」「彼女の顔立ちには、母親の面影があるように感じる」などのように使われることが多い、「面影」。
「かつての街の面影は、すっかりなくなってしまった」など、人以外のものに対しても使うことができます。また、古典の世界では、「実際に存在しないのに見えるように思えるもの」「幻影」という意味として、使われることもあります。
「面影」の漢字の由来は?
「面」という漢字は、顔を意味します。一方で、光が当たることで出来る暗い部分のことを指す「影」には、映し出された姿かたちという意味が含まれるそうです。この二つの漢字が組み合わさって、「心に思い浮かぶ顔や姿」という意味の言葉が生まれたと考えられます。
太田道灌と面影草
皆さまは、「面影草」と書いて「ヤマブキ」と読むことをご存知でしょうか? ヤマブキは、美しい山吹色の花を咲かせる落葉低木のことです。ヤマブキと言えば、室町時代の武将・太田道灌(どうかん)にまつわる逸話が知られています。
ある日、鷹狩に出かけた道灌は、突然の雨に見舞われてしまいます。近くにあった農家で蓑を借りようとした道灌でしたが、中から出てきた若い娘は、ヤマブキの花を一枝差し出すだけでした。花ではなく、蓑が欲しいのにと憤った道灌は、後でその件を老臣に話したそうです。
すると、老臣は「七重八重花は咲けども山吹の 実の一つだになきぞ悲しき」という、平安時代の古歌があることを道灌に伝えました。その娘は、蓑一つもないほどに貧しい家であるということを、実をつけない八重のヤマブキに例えて伝えようとしたのではないかと、老臣は考えたのです。
老臣の話を聞いた道灌は、自らの無学を恥じ、和歌に精進したそうです。太田道灌と言えば、文武両道の知将として知られています。この逸話については諸説ありますが、常に自分を律する道灌のひたむきな一面を垣間見ることができますね。
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いかがでしたか? 今回の「面影」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 心に思い浮かべる姿かたちという意味を持つ「面影」は、植物の漢字にも使われていることが分かりました。
ほかにも調べていただくと、より知見が広がるかもしれません。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
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