正しい意味を理解し、適切に漢字が使えているのか、疑問を感じることが増えていませんか? 適当に漢字を使ってしまい、気付かないところで「恥をかいている」ということがあるかもしれませんね。Google 先生やデジタルデバイスの出現により、便利になった反面、情報の中身については⼗分な吟味が必要な時代になっております。
あなたの“漢字の知識”は確かでしょうか? もう⼀度、確認しておいても良いかもしれません。「脳トレ漢字」第192回は、「朴訥」をご紹介します。あまり聞き馴染みのない言葉ですが、『論語』では理想的な性格の一つとして挙げられています。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「朴訥」とは何とよむ?
「朴訥」の読み方をご存知でしょうか? 「ぼくのう」ではなく……
正解は……
「ぼくとつ」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「質朴で朴弁であること」「飾り気がなく、口数が少ないこと」と説明されています。「あの人は朴訥な人だ」などのように使われる「朴訥」。類義語として、「純朴」「寡黙」「実直」などが挙げられます。
また、古代中国の思想家・孔子の教えが記された『論語』では、「剛毅(ごうき)朴訥仁に近し」という一文が記されています。これは、剛毅で飾り気のない人は道徳の理想である仁に近いという意味です。
「朴訥」の漢字の由来は?
「朴訥」の「朴」という漢字には「素直」「律儀」という意味が含まれ、「訥」には「口下手」という意味が含まれるそうです。また、「朴訥」を「木訥」「樸訥」と表記することもありますが、いずれも同じ意味になっています。
ためになる『論語』
先述の通り、「朴訥」は『論語』の中で、理想的な性格の一つとして挙げられています。孔子は、古代中国の国・魯(ろ)の思想家です。3000人もの弟子がいたとされ、孔子の死後、彼の教えを記録した思想書『論語』が編集されることとなりました。
教科書にも掲載されている『論語』ですが、私たちが生きていく上で役立つ教えが数多く記されています。例えば、「欺くことなかれ。而(しか)してこれを犯せ」という教えが挙げられます。これは、主君との付き合い方に悩む弟子に向けた教えで、「嘘をついてはいけない。そして、主君に逆らってでも諫めなければいけない。」という意味です。
注意されることを恐れてごまかしたり、上司の顔色を伺って何も言えなかったりした経験は、誰にでもあるのではないでしょうか? 孔子は、嘘をつくこと・相手の顔色を伺う生き方を強く諫めています。
また、「学びて思わざれば罔(くら)し。思いて学ばざれば殆(あやう)し。」という教えもあります。これは、「本や教師から学ぶだけで、自分で考えることを怠ると、知識は身につかない。しかし、自分の頭で考えるばかりで読書を怠ると、独断的な人になってしまう。」という意味です。
何かを始める時に、それに関する本を読んだり、講師に教わったりするのは大切ですが、実際に自分で考えながらやってみなければ、本当の実力は身につかないかもしれません。しかし、人の意見やアドバイスを聞き入れず、自分の殻に閉じこもると、独りよがりな偏った思考に陥ってしまいます。
孔子は教えの中で、知識を取り入れることと自分の頭で考えることのバランスが大切であると指摘しているのです。
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いかがでしたか? 今回の「朴訥」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 「朴訥」は、『論語』の中で理想的な性格の一つとされていることが分かりました。『論語』には、他にもためになる教えが多数記されています。
困難に直面した時や、思い悩んでいる時には、『論語』の教えが役立つかもしれません。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
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