花見と言えば桜というほど、日本人にとって特別な存在である桜。満開の桜を見れば、それだけで心が浮き立ちますよね。年々、満開の時期が早まっていますが、2024年も例年より早い開花や満開が予想されています。
そこで今回は『サライ.jp』に掲載された、桜に関する雑学記事をまとめてご紹介。歌舞伎や落語と桜とのかかわりから歴史上の人物たちのエピソード、枝垂桜(しだれざくら)の誕生秘話まで。桜のことをもっと知れば、いつものお花見もさらに楽しくなりそうです。
■日本人の桜好きに影響を与えたのは江戸歌舞伎!?
嵯峨天皇が812年3月に神泉苑(京都)にて「花宴の節(せち)」を催したのが始まりとされる観桜。庶民に広まったのは江戸期に入ってからと言われています。パッと咲いて散るソメイヨシノの普及に伴い、桜に対する庶民の美意識を育てたのが歌舞伎なのだそうです。
満開の桜を背景にした舞が美しい『京鹿子娘道成寺(むすめかのこどうじょうじ)』、捕らえられ桜の木に縛りつけられた姫の上に、その姿をかき消すほどに桜が降り注ぐ『祇園祭礼信仰記(ぎおんさいれいしんこうき)』、当時盛んとなった花見の影響がみられる『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』。これら3つの演目から、現在の桜のイメージが江戸歌舞伎の演出に大きく影響されていることを感じることができます。
日本人の桜好みは江戸の歌舞伎が育てた!? 「桜」を扱う歌舞伎の名演目3つ
■花見を楽しみにする庶民が主人公の落語
江戸時代、花見は年に一度きりの、身分も問われない無礼講の場でした。そのため、花見を題材にした落語も枚挙に暇がないほど。
「花より団子」ならぬ、酒も肴もまがい物という庶民の花見を活き活きと描いた『長屋の花見』、酒を買う金はなくとも花見はしたいが、いざ花見に行けば酒が無性に飲みたくなる、という心理を巧妙に突いた『花見酒』、サクランボを種ごと食べた男の頭に桜の木が生えてくる『頭山』など。花見を楽しみにしていた江戸の人たちに親近感がわきますよ。
究極にシュールな噺も!今こそ聴きたい「花見」を題材にした落語3つ
■約1か月の間、250種類の桜が楽しめる北海道の名所
桜にはどれぐらい種類があるかご存じですか? 北海道の城下町・松前町には、なんと250種類、1万本もの桜が咲くのだそうです。
樹齢300年を超す、松前最古の“血脈桜”は「松前早咲」(別名「南殿」)の原木で、東西17メートルに及ぶ立派な枝ぶり。ほかにも、白い花びらの周辺部だけにほんのりと赤みがさす「霞桜」、5月初旬ごろに大輪の八重の花を咲かせる「雨宿」など、4月下旬から5月中旬にかけて約1か月ほど桜が咲き誇ります。
約250種もの桜が咲く日本最北の城下町「松前」へ桜を観に行く
■将軍によって造られた庶民のための花見の名所
現在では、花見と言えば上野が名高いですが、江戸時代は花見と言えば「飛鳥山」が有名でした。
その「飛鳥山」に数千本もの桜の木を植えたのは、8代将軍吉宗(1684~1751)。緊縮政策で不満が募っていた庶民たちの遊興の地として整え、歌舞音曲の花見を許したのだそうです。
■有名な禅僧さえも魅了する桜の美しさ
中世に活躍した禅僧・夢窓疎石(むそうそせき・1275~1351)ゆかりの名刹、京都の西芳寺(さいほうじ)。現在は苔寺の名で親しまれていますが、当時は苔よりも春の桜、秋の紅葉で都人あこがれの名所だったそうです。
大の桜好きだったという夢窓は桜への思いを託した和歌を多く遺しました。
■栽培品種のひとつとして誕生した枝垂桜
枝垂桜といえば、枝がたれ下がった桜というイメージです。まるで花が降り注いでくるようなその姿に魅了される人も多いことでしょう。
ですが、この枝垂桜はじつは栽培品種のひとつにつけられた固有名詞だと知っていましたか? 日本に自生する桜のひとつ「エドヒガン」という桜の中で、枝が枝垂れ、花が一重のものを育てたものが始まりだそうです。
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日本には自生する10種類の桜など、たくさんの桜が植えられ、名所や名木も全国に存在しています。桜の多様性を知り、花見をより楽しんでください。
文/編集部