数字や文字の羅列であるデータもビジュアル化されていると理解しやすいということは、よくありますよね。可視化されることで全体像を理解し、物事の本質も認識しやすくなります。日本では有名チェーン店の店舗数やコンビニの所在地といった身近なものから、少子高齢化や気候変動といった社会問題まで、さまざまなデータが公開されています。これらを可視化することで、今まで見えていなかった日本の姿が見えきます。

今回は、地理や自然に関するデータをわかりやすく可視化し、講演会なども行なっているにゃんこそばさんの著書『ビジュアルでわかる日本 データに隠された真実』から、熱帯夜と猛暑日の日数を可視化したデータをご紹介。記録的な猛暑や水不足が発生した1994年から明らかに変化していることがわかります。

文/にゃんこそば

海に近いところほど熱帯夜となりやすい

夏の夜には、気温が25度を下回らない「熱帯夜」となることがあります。8月に熱帯夜となった日数をまとめてみました(図1)。

【図1 8月の最低気温25度以上の日数(2013~2022年の平均) 全国】
三大都市圏や瀬戸内海沿いで熱帯夜が多い。

この地図を見ると、海に近いところほど熱帯夜となりやすいことがわかります。海水は温まりにくく冷めにくいので、内陸と比べて夜でも気温が下がりにくいからです。また、都市部ではビルや道路などが熱をため込んだり、工場や車などが熱を出したりすることで、気温が下がりにくくなる「ヒートアイランド現象」も影響しています。

逆に、海から離れた内陸では夜中にぐんと冷え込みますし、北海道や東北地方では、平地でも20度ぐらいまで下がります。

大都市を拡大すると「海」と「ヒートアイランド」の影響力がわかります。首都圏では、東京湾や相模湾に沿って熱帯夜の多い地域が広がっています。また、内陸でも都市化の進んでいるさいたま市周辺では、週3~4回ペースで熱帯夜を記録しています。一方、関東山地に近いエリア(八王子や飯能)、鹿島灘からの冷たい北東風が入り込みやすいエリア(つくばや成田)では、夜の暑さが控えめです(図2)。

【図2 8月の最低気温25度以上の日数(2013~2022年の平均) 首都圏】
東京湾に沿って、熱帯夜の多い地域が広がっている。

近畿圏や中京圏では、おおむね週4~6回ペースで熱帯夜となります(図3)。特に京都は三方を山に囲まれているため、街を風が通り抜けにくく、湿気もあるので、気温以上に蒸し暑く感じます。

【図3 8月の最低気温25度以上の日数(2013~2022年の平均) 近畿圏、中京圏】
首都圏よりも熱帯夜が多い。奈良県や滋賀県内では寝苦しさが少し和らぐ。

日本の夏の暑さのレベルは「1994年」から変わった

ところで、日本では1960~70年代以降、気温が上昇し続けています。特に夏の夜の気温が下がりにくくなり、熱帯夜が徐々に増える傾向にあります。図4は、1950年以降、8月の熱帯夜の日数を都道府県別に集計し、可視化したものです。

【図4 8月の熱帯夜の日数(47都道府県)】
1994年を境に熱帯夜が増加。近年では長野でも熱帯夜の日数が増えてきた。

1970年代まで、熱帯夜は年間数日~10日ぐらいの地域が多かったのですが、猛暑となった1994年ごろを境に状況が一変していることがわかります。

熱帯夜が増えた原因としては、地球温暖化現象や、数年から数十年の自然変動が考えられています。さらに都市部では、ヒートアイランド現象の影響も加わった結果、1950年代からの約70年で、夜中から明け方にかけての最低気温が約2度も上昇し、いまや25度を下回る日は数えるほどです。

最近は猛暑日も増えています(図5)。

【図5 8月の猛暑日の日数(47都道府県)】
近年では、戦後「最も暑い」と言われた1994年に匹敵する猛暑が2~3年おきにやってきている。

1994年には記録的な猛暑、水不足が発生。西日本を中心にダムが干上がったり、大規模な給水制限によって工場の稼働が停止したりするなど、社会経済に大きな影響が出ました。当時は「戦後、最も厳しい暑さ」と言われたものですが、2010年以降、このクラスの暑さが当たり前になってしまいました。

参考(1): 農研機構『メッシュ農業気象データ』(https://amu.rd.naro.go.jp/
参考(2): 気象庁『過去の気象データ・ダウンロード』(https://www.data.jma.go.jp/risk/obsdl/index.php
参考(3): 総務省統計局『生活消費実態調査 地域編 主要耐久消費財に関する結果』(1994年、2014年)

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ビジュアルでわかる日本 データに隠された真実
著者/にゃんこそば 監修/宮路秀作
SBクリエイティブ 1,870円

にゃんこそば
東京都生まれ、神奈川県育ち。データ可視化職人。民間企業でクラウドサービスの企画、開発やビッグデータ利活用に従事するかたわら、個人活動としてオープンデータや公的統計の可視化、地図アプリの作成に注力し、日本や世界の「今」が一目でわかる作品を多数公開している。主な活動歴は国土交通省『3D都市モデルの整備・活用促進に関する検討分科会』など。X(旧Twitter)のアカウント名は「にゃんこそば@ShinagawaJP」(約6.6万人フォロワー)。TV、新聞、ネットメディアでの取材歴多数。

 

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