数字や文字の羅列であるデータもビジュアル化されていると理解しやすいということは、よくありますよね。可視化されることで全体像を理解し、物事の本質も認識しやすくなります。日本では有名チェーン店の店舗数やコンビニの所在地といった身近なものから、少子高齢化や気候変動といった社会問題まで、さまざまなデータが公開されています。これらを可視化することで、今まで見えていなかった日本の姿が見えきます。
今回は、地理や自然に関するデータをわかりやすく可視化し、講演会なども行なっているにゃんこそばさんの著書『ビジュアルでわかる日本 データに隠された真実』(SBクリエイティブ)から、マンション価格を可視化したデータをご紹介。築年数やスペックでどのように価格が上下するのか、首都圏の中古マンション価格などがひと目でわかります。
文/にゃんこそば
築年数が10年古くなると15~20%安く買える
マンション価格は、同じ駅でも「築年数」「立地」「建物スペック」を妥協すれば値段が下がります。
3つの項目の中では特に築年数による違いが大きく、首都圏で同じような立地、規模のマンションを比べた場合、10年古くなるごとに15~20%ずつ値下がりし、おおむね30~40年で半額になります。
例えば、埼玉県さいたま市のJR浦和駅では新築マンションが70平方メートルあたり7,000~8,000万円、築10年が6,000万円という相場です。これが築20年なら5,000万円、築30年なら4,000万円まで下がります(図1)。
2000年代前半よりも前に建てられたマンションでは内装や水回りの古さが目立ってきますが、適宜リフォームを入れることで新築に近い住み心地を手に入れることができるので、どうしても駅や路線、広さなどをあきらめられない場合には、「築古+リフォーム」を検討してみてもよいでしょう(※1)。
※1 リフォームに適した物件と、そうでない物件があるので要注意。1990年代以前の建物では遮音性や断熱性などの基本性能が低く、内装を整えても生活音や結露に悩まされることがあります。床下の構造上、キッチンなどの水回りの場所を変えられないことも少なくありません。筆者が次にリフォームするとしたら、マンションの基本性能が向上した2002~2003年以降の物件を選びます。
図2、3、4に、主な都市圏の築20~40年前後のマンション価格をまとめてみました。少しは目に優しくなったでしょうか。
立地と築年数を妥協すれば安く買える
マンションの価格は立地によっても変わります。駅やスーパー、商店街などへの行きやすさ、部屋からの眺望や街路、街区の雰囲気などです。中でも駅からの徒歩時間による影響が大きく、先ほど挙げた浦和駅の場合、駅徒歩5分と15分では相場が30%も変わってきます(図5)。
また、築年数も立地もあきらめられない場合は、建物のグレードを妥協することで予算を下げられます。同じような築年数、立地であっても、建物の種類(タワーマンションか板状マンションか)によって価格が変わってきますし、外装(外壁の仕上げ材)、内装(室内扉などの建具やフローリング)、設備(キッチン、風呂、トイレなど)、共用部(ラウンジ、スポーツジム、テレワークスペースなど)の違いが積み重なって、50%以上の価格差がつくこともあります。
将来的に家を売却することを考えると、「安く買って安く売る」よりも「高く買って高く売る」ほうがお得な場合もあるのですが、資産性(将来どれぐらいの売却益が見込めるか)にとらわれるあまり、狭くて高い家を買って日々の生活に不満が出てしまっては本末転倒です。地域別・年代別のマンション相場をしっかり勉強した上で、「好きになれそうな街」で「身の丈に合った予算内の家」を「相場通りに買う」よう心がけたいところです。
参考: 不動産流通機構『レインズ マーケットインフォメーション』(http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do、2023年5月1日閲覧)
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にゃんこそば
東京都生まれ、神奈川県育ち。データ可視化職人。民間企業でクラウドサービスの企画、開発やビッグデータ利活用に従事するかたわら、個人活動としてオープンデータや公的統計の可視化、地図アプリの作成に注力し、日本や世界の「今」が一目でわかる作品を多数公開している。主な活動歴は国土交通省『3D都市モデルの整備・活用促進に関する検討分科会』など。X(旧Twitter)のアカウント名は「にゃんこそば@ShinagawaJP」(約6.6万人フォロワー)。TV、新聞、ネットメディアでの取材歴多数。