藤原定子と清少納言の絆
藤原定子は、女房である清少納言とともに語られることが多い人物です。定子に仕えるようになった清少納言は、彼女の人柄や教養の高さに感銘を受け、生涯を通して忠誠を尽くしました。理想的な主従関係だったとされる二人にまつわる逸話は、『枕草子』の中に数多く記されています。
その中でも最もよく知られているのは、「香炉峰の雪」の逸話ではないでしょうか? 雪が降る寒い日に、女房同士で談笑していると、定子が突然「香炉峰の雪はどんなものだろうか」と、清少納言に尋ねたそうです。これは、古代中国の詩人・白居易(はくきょい)の漢詩にある、「香炉峰の雪は簾をかかげて看る」という一句を使った謎かけです。
そのことにすぐ気づいた清少納言は、御簾を高く上げ、定子を喜ばせたとされています。清少納言の教養の高さはもちろんですが、白居易の漢詩をすぐに思い浮かべることができる定子も、非常に学才があったと考えられます。
清少納言の代表作として、広く知られている『枕草子』。実は、この作品が執筆されたのは、中関白家が没落し、宮廷での定子の立場が危うくなり始めた頃だったのです。しかし、『枕草子』の中には、定子の不遇に関する記述は見られず、彼女の容貌や学才を讃えるエピソードと、宮廷での楽しい生活の話で満たされています。
清少納言にとって、宮廷での生活や定子とともに過ごした時間は、かけがえのないものだったのかもしれません。
まとめ
関白・道隆のもとに生まれ、中関白家の繁栄から没落までを経験することとなった藤原定子。残された彼女の子どもたちは、彰子によって大切に育てられたそうです。聡明であるだけでなく、誰からも愛される素敵な人柄だったのではないでしょうか?
※表記の年代と出来事には、諸説あります。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
肖像画/もぱ(京都メディアライン)
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引用・参考図書/
『日本大百科全書』(小学館)
『世界大百科事典』(平凡社)
『山川日本史小辞典』(山川出版社)