大河ドラマの路線は変更されたのか?

I:ということで、ここからが本題になります。40年ぶりに徳川家康を主人公に配した『どうする家康』も好評のうちに幕を閉じましたが、次の作品が平安時代中期の『光る君へ』、そしてその次が江戸時代中期の蔦屋重三郎を主役にした『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』です。大河ドラマ50作目の『江 姫たちの戦国』(2011)以降のラインナップを振り返ると、戦国→源平→幕末→戦国→幕末→戦国→戦国→幕末→近代→戦国→幕末~昭和→源平鎌倉→戦国(『江 姫たちの戦国』→『平清盛』→『八重の桜』→『軍師官兵衛』→『花燃ゆ』→『真田丸』→『おんな城主 直虎』→『西郷どん』→『いだてん~東京オリムピック~』→『麒麟がくる』→『青天を衝け』→『鎌倉殿の13人』→『どうする家康』)となっています。圧倒的に「戦国」と「幕末」が多くて、厳しい表現でいえば、やや思考停止状態ともいえる状況の中での『光る君へ』『べらぼう』ですから、なんらかの路線変更がなされたものと思われます。

A:おそらく昭和50年代に局内で交わされたような議論が戦わされた末に、『光る君へ』『べらぼう』という流れになっているのではないかということですね。とすれば、どのような路線変更がなされたのか、興味深いところなので追々取材してみたいと思います。そういう意味では、2024年の『光る君へ』は重要な作品になります。脚本に『功名が辻』で大河ドラマを経験している大石静さんを起用していますから、脚本面での不安要素はありません。紫式部を演じる吉高由里子さん、藤原道長を演じる柄本佑さんと、俳優陣にも死角はない。あとは演出がどうかということですが、実はこれがテンポがよいということで注目されています……って他人事のようにいっていますが、大注目です。面白くなる予感しかしません。

I:そこまでいうのは珍しいですね。

A:追々話題になってくると思いますが、演出面で大河に新風を巻き起こすのではないかと思います。要注目です。

I:そして毎回強調していますが、美術スタッフの仕事ぶりも忘れてはいけないですね。特に『光る君へ』では平安貴族の暮らしぶりなどが登場すると思われますから、どのような小ネタを仕込んでくるのか、楽しみですね。

A:さて、大河ドラマの今後ですが、これまでもっとも古い時代を扱ったのが平将門と藤原純友が主人公だった『風と雲と虹と』です。西暦でいうと900年代の物語です。すでに平安時代ですから、実は、大河ドラマでは奈良時代は描かれていないことになります。

I:大河ドラマファンの間では「奈良時代の物語を見たい」という意見も根強くありますね。

A:かつて、NHK大阪の制作で『聖徳太子』(2001)、『大化改新』(2005)、『大仏開眼』(2010)などの古代史ドラマが放送されたことがあります。最後の『大仏開眼』から10年以上の時が経過しました。積み上げてきたノウハウが雲散霧消する前に、「大河で古代史」、実現しないですかね。

I: 古代史大河に期待する声があるのはわかりますが、そのためには大河ドラマ史上2番めに古い時代を扱っている『光る君へ』が盛り上がるのが肝要ですね。

A:そうなんです。制作陣にプレッシャーをかけるつもりはありませんが、「古代史大河」実現に向けて、失敗が許されないという重大な使命を帯びているのが『光る君へ』なのです。

I:もう勝手にそんな設定を設けたら怒られますよ。

A:日本の歴史を俯瞰すると、『光る君ヘ』の時代はほぼほぼ平和な時代で、宮廷文学が花開きました。それがなぜ武士の時代になっていくのか。子供たちにも見てもらいたい作品になっていると思います。

I:文学が隆盛した背景には、ひらがなの普及も関係してきます。日本人のつくりあげてきた工夫についても裏設定として楽しんでほしいです。

A:なんだか楽しみですね。

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。

●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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