家康が茶々に送った書状に込められた思い

家康(演・松本潤)からの書状をよむ茶々(演・北川景子)。(C)NHK

I:実質的に初と江の要請で書かれた家康の手紙が登場しました。「赤子のあなたを抱いた時を、今も鮮やかに覚えております」「乱世を生きるは我らの代で充分。子供らにそれを受け継がせてはなりません」「私の命はもう尽きまする。乱世の生き残りを根こそぎ引き連れて、滅ぶ覚悟でございます」……。

A:花吹雪舞う中で佇む家康――。なんだかいい場面になりました。このシーンを見ると改めて本作の肝は「瀬名と家康」「お市の方、茶々と家康」に重きをおいていたことがわかります。

I:加えて、徳川家臣団の群像劇ですね。

寒くてたまらなかった大坂冬の陣

I:さて、茶臼山の陣での家康が寒そうな感じが凄く伝わって来るのですが……。

A:実際に寒かったそうなので、史実に忠実な描写だと思って見ていました。ただそうした中でも家康は駿馬に乗馬して敵陣視察に出たり、士気を高める行動も老体に鞭打って行ったりしていたようです。

I:茶臼山の陣にも浴室付きの立派な建物がつくられていたそうですね。

A:前出の中公新書『大坂の陣』には浴室だけでなく、茶室や広い台所、さらには近臣が控える二十畳の部屋など、けっこう豪華な建物が建造されていたことが記されています。

I:70歳過ぎた家康がずっと寒風の陣にいるわけがないですが、それだと絵になりませんものね。

ラスボスは秀頼だったのか

I:秀頼が浪人たちを鼓舞しました。「余のまことの心を申す」と「信じるものを決して裏切らず、わが身の危険を顧みずに世に尽くす。それがまことの秀頼である」と。秀頼がこんなにも勇猛果敢に描かれる作品は珍しいのではないでしょうか。

A:滅亡の美学ですね。茶々は北ノ庄の戦いの時に家康にも身の危険を顧みずに助けて欲しかったということなのでしょう。秀頼が「ともに乱世の夢を見ようぞ」と叫んだ時に画面に向かって「おお!」と呼応した人もいたのではないでしょうか。私も子供の頃だったらやっていたかもしれません(笑)。

I:えいえいおう!  が13回ほど連呼されていました。私は5回目以降、「おお!」と拳を突き上げましたよ。「ともに乱世の夢を見ようぞ!」。もっと早くこのフレーズを連呼してほしかったですね。

A:欲をいえば、前半の家康に、家臣団を強烈に鼓舞する場面を演じて欲しかったですね。いや、でも勇猛果敢な秀頼、インパクトありましたね。さて、一連の場面を見て、徳川方の条件をのんで生き残りをはかった方がよかったのではないかと感じた人もいるのではないでしょうか。確かに家康が大御所として君臨し続けていればそういう選択があったかもしれません。でも家康亡き後のことを考えれば、加藤清正(演・淵上泰史)、福島正則(演・深水元基)、加藤嘉明など豊臣恩顧の大名は2代目が言いがかりとも思える理由で改易の憂き目にあっています。家康側近の本多正純(演・井上祐貴)がいつまで権勢を握って、その末路はどうなったのか、など考えると、秀頼の決断もむべなるかなという感じですね。

I:秀頼も徳川方の条件をのんで大和や伊勢に移封したとしても、秀忠の代になったら無事である保証はなかったということですね。

A:秀頼と秀忠を比べた時、本作では圧倒的に秀頼に肩入れしたくなりますよね。ちなみに秀頼時代の大坂はかなり繁栄していて賑やかだったそうです。当時の江戸はまだ開発途上ですから、当時の大坂は日ノ本一の都だったということでしょう。本作の秀頼の勇猛な姿に「大坂復権」の夢を見たような気がします。

I:次回、いよいよ最終回。すでにロスです。寂しいです。なんだか涙が出てきそうです。

A:大げさだなぁ。

乱世を終わらせたい家康。(C)NHK

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。

●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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