文/鈴木拓也
40代半ばの仕事人生にふと疑問を感じて
お笑いタレントのカンニング竹山さん。
元気な活躍ぶりが知られるが、数年前は思い悩むことが多かったという。
当時、テレビ番組を盛り上げる役割が求められていたが、「それが芸人の本質なのかという疑問」を感じていた。それに、優秀な後輩が続々と登場し、外部からは楽しく見える仕事が、苦しいと感じることも。
そんなおり、大御所で大先輩の堺正章さんに、こう声をかけられた。
「竹山くんね、今仕事が順調だろ? レギュラーもあって、テレビにもしょっちゅう出ている。だけど、若い頃みたいにもっと前に出たいとも思わなくなった。俺って何やっているんだろう? 将来どうなるんだろうと、なんだかもがいているような気持ち、ないかい?」
どんぴしゃりの指摘であった。竹山さんは思わず、「どうすればいいんですか?」と尋ねると、「遊ぶんだよ」という答えが。
芸能界随一の趣味人である堺さんは、40代半ばの竹山さんに、「時にはひとりで遊んで、どんどん見識を広めていく時期」だとアドバイスしたのである。これが、竹山さんの心の琴線にふれるものがあった。そうして、竹山さんも趣味の世界に開眼。今では、多趣味と仕事を両立する日々を送る。
そんな竹山さんが、このたび上梓したのが『カンニング竹山の50歳からのひとり趣味入門』(ポプラ社)だ。本書には、「50歳を過ぎてからは、気を使わない趣味のほうが楽」というポリシーのもと、ご本人が楽しんで、同世代にもすすめたい趣味が取り上げられている。
今回はその一部、竹山さん流の「飛行機」と「キャンプ」の趣味を紹介しよう。
軽飛行機を操縦したことも
若い頃は飛行機に乗るのが怖かったという竹山さんだが、本屋でふと手に取った航空力学の本を読み、逆に関心を持つようになったという。
なんだか面白くなってきちゃって、そこから飛行機に乗る時に、「あ、この体が浮き上がる感じは本で読んだあれだな」みたいに考えるようになって、自分が得た知識の答え合わせをしていたんです。そうしたら、だんだんと怖くなくなった。(本書43pより)
それから、羽田空港のギフトショップなどで、飛行機の模型を購入することにハマりだす。「もう沼ですよ」と述懐する竹山さんは、かれこれ100機くらい集めたそうだ。実機も好きで、空港に行くのが楽しいとも。
さらには、軽飛行機を自分で操縦したこともある。日本ではそのハードルは高いが、ハワイだと、はじめに簡単な検査と説明を受けた後、横にパイロットがついていれば飛ばせるという。竹山さんは、ホノルル空港を出発して、ダイヤモンドヘッドやノースショアを回るコースを満喫したそうだ。
ほかにも飛行機に関する趣味は、実機撮影やマイル貯蓄など、幅広くて奥が深い。竹山さんは、どれか興味があるものに取り組んでみることをすすめる。
2泊3日のソロキャンプを満喫
竹山さんは、小学生のときからキャンプにはよく行っていたという。芸能界に入っても、何度かグループキャンプをしているが、最近はもっぱらソロキャンプ。
何人かと行っても、めいめいが設営した小さなテントの前に、小さなテーブルと椅子を用意し、各自が焚き火などして楽しむ。
ソロキャンプでは、だんだんと日が暮れてくると、自分の食べる簡単な料理を作る。たまに、ひぐち君や大和に「これ作ったけど食べる?」とか聞いたりはしますけど、やりとりはそれくらい、あとは焚き火をぼーっと眺めながら、また酒を飲んで、たばこを吸って、薪をくべて。その時間が不思議とめちゃくちゃ楽しいんですよ。(本書78pより)
あくまでも、「都会の喧騒から離れて現実逃避をする」のがソロキャンプの醍醐味。高価でかさばる道具をそろえる必要はないが、椅子にはこだわるべきだという。ソロキャンプでは、座っている時間が長くなるため、座り心地が快適さを左右するからだ。さらに竹山さんは、ランタンも好みを追求。古い名品をネットオークションで手に入れた。よく壊れるが、それでも修理してもらいながら、愛用している。
そして、キャンプの日数も「2泊3日が断然いい」とも。1泊だとどうしてもせわしなくなるが、2泊に延ばすだけで「朝からぼーっとできる」時間が作れる。「この時間が最高」だという。
一方、行く場所についてはこだわりすぎず、まずはアクセスのいいところをすすめる。東京を拠点にする竹山さんは、比較的近い河口湖や西湖にある設備の整ったキャンプ場によく行く。キャンプといえども、設営や撤収作業という「過酷で大変な部分」もあるので、あらかじめその点は心しておくようアドバイスしている。
竹山さんの趣味は、野球・アメリカンフットボールの観戦、YouTube動画制作、バイクのツーリングなど多岐にわたる。 50代に入って仕事人生にふと立ち止まっている方は、読んで得るものは多いはずである。
【今日の教養を高める1冊】
『カンニング竹山の50歳からのひとり趣味入門』
文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)に掲載している。