文/印南敦史

65歳以上は、なんだかんだ言っても「逃げ切り世代」。しかし50代は違うと指摘するのは、『50代 後悔しない働き方』(大塚 寿 著、青春新書インテリジェンス)の著者。リクルートの営業マンを経て、現在はオーダーメイド型企業研修を展開する会社を経営している人物である。

たしかに、そのとおりかもしれない。ほとんどの企業や組織では50代で年収が最大化し、待遇に見合った成果を求められることになる。そればかりか、チーム全体のパフォーマンス向上、マネジメント、部下の育成、技術の継承など、役割も絶大だ。

さらに役職定年・早期退職、親の介護、自身の健康など、40代には他人事であったはずの問題に次々と直面することにもなるだろう。

仕事では役職定年を迎え、まさに「後がない」のです。
定年が65歳以上に延びる企業が多いとはいっても、60歳になった時点で新入社員レベルの条件での再雇用になるケースがほとんどです。
サラリーマン人生が事実上「試合終了」になる10年間なのです。(中略)
50代は、40代の延長ではありません。
“50代モード”にシフトチェンジする必要があります。
(「はじめに」より引用)

事実、真面目にコツコツやってきたにもかかわらず、会社を離れたあとで苦労しているという人は決して少なくない。かと思えば、60代になってからうまくやっている人たちも確実に存在する。だとすれば、その差はどこにあるのだろうか?

この点について著者は「後悔しないための方法」を、50代で知っていたか否かにかかっていると主張している。

そこで本書では、本来であれば重視されるべきである「リアルな情報」と、50代以降をうまく展開させている人々の事例を紹介しているのだ。

なかでも重要なポイントは、「後悔を避けるために、60代前半のイメージをしておく」ことの重要性を説いている点である。

50代を卒業した後に進む道は多様で、得られる年収の額もさまざまだ。企業や開店する人もいるだろうし、会社を買う人もいるかもしれない。そのあたりは人それぞれなので「こうするべき」と過度に一般化できないが、現実問題として役職定年後の転職や、定年直後の再就職、セカンドキャリアの1度目で失敗する人は少なくない。

だが、その後の再就職やセカンドキャリアがフィットして、65歳、70歳、75歳まで仕事を続けてハッピーリタイアする人も多いのだ。そう考えると、1度や2度失敗したくらいでがっかりする必要はないのである。

重要なのは、同じミスを繰り返さないために、「次にどうするか」を考えていくこと。

いずれにしても、組織に属する50代であれば誰にでも、60歳の定年を迎える日は必ず訪れる。その時点で定年延長を選んだり、「攻撃型」の再就職活動をしたり、「守備型」で臨んだり、顧問という役職を得たりと、さまざまな生き方を選択することになる。

だが、どのような道に進むにしても、定年から半年経った時点で、「結果」を自己評価してほしいのだと著者は言う。

評価の基準は、
「65歳以降の『年金+300万円』につながる可能性の高さ(低さ)」
です。(207ページより引用)

もちろん、65歳以降に完全リタイアしても経済的に問題ないのであれば、それはそれでかまわないだろう。だが、それ以外の人は、まずこの基準で評価してみるべきだというのである。

「可能性が高い」「やや高い」という評価であれば、そのまま続けてください。
問題は「可能性が低い」「やや低い」場合です。
とくに「低い」場合は、その仕事をキープしながらさっさと再就職活動か起業、開業の道を模索し始めましょう。「さっさと」がポイントです。
(本書208ページより引用)

大切なのは、「ピンときた」方法に「さっさと」トライすること。そしてもうひとつ、「しょせん」ということばを意識することも見逃してはいけないという。

再雇用というのは、雇う側にとっても雇われる側にとっても「しょせんセカンドキャリア」「しょせん300~400万年台の年収の話」「しょせん1年から5年の雇用期間の話」。しかも、同じような事業内容や待遇の話は他にもあるものだ。

したがって「さっさと」もっと希望に合う、あるいは抵抗感が少ない勤務先を探すほうが精神衛生上いいという考え方である。

さらにいえば、「しょせんセカンドキャリア」なのだから、「転職は3回まで」というようなルールも存在しない。雇用機会を決めるのは、「需要と供給のバランスに尽きるということだ。

そう考えれば60代の仕事に対するハードルは高いものではなくなるだろうし、やがてくるその時について前向きに考えることができるようになるのではないだろうか?


『50代 後悔しない働き方』

大塚 寿 著
青春新書インテリジェンス
定価 1045円(本体:950円)
2020年7月刊行

文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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