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「援軍は来る！」と絶叫した鳥居強右衛門の物語。配役の妙で涙・涙の感動回になった！【どうする家康満喫リポート】21

2023/6/4

ライターＩ（以下Ｉ）：今週は長篠城の攻防が描かれました。以前にも話しましたが、三河出身の私は小学生の頃に学校で鳥居強右衛門（演・岡崎体育）のことを教えられ、磔になった強右衛門を絵に描く授業を経験しているので、強右衛門にしっかり尺をとった第21回は感慨深いものがありました。

編集者Ａ（以下Ａ）：長篠城跡には磔になった強右衛門の看板がありますから、強右衛門は「三河の英雄」なんですね｡さて、先週に続いて地図を眺めながらの解説になりますが、長篠城は愛知県新城市にあり、浜松と岡崎の間に位置します。この頃の対武田の最前線として重要な城でした。

Ｉ：地図を眺めているとどうやって甲斐から三河まで来たんだろうという素朴な疑問が浮かびます。甲斐と三河の間には、南アルプスがありますから進軍がけっこう大変ですよね。いったいどういうルートだったのでしょう。

Ａ：『どうする家康』で時代考証を担当されている平山優さんが『敗者の日本史９長篠合戦と武田勝頼』（吉川弘文館）で解説してくれています。同書の195頁には長篠までの推定進軍ルートが紹介されていますよ。

Ｉ：こういう書籍を片手に本編を見ると脳内でいろいろ膨らんでいきますね。これも大河ドラマを見る醍醐味。

Ａ：はい。さらに調べていくと、このルートは南北朝時代にも進軍ルートになっていたようです。秋葉信仰で有名な秋葉神社に参る秋葉街道なんですね。青崩峠など写真で見ると、「こんなところを行軍したの？」と思ってしまいます。

Ｉ：景色も良さそうなので、秋にでも平山さんの著書を片手に歩いてみたいですね。

鳥居強右衛門が日本の歴史を変えた？

Ｉ：さて、長篠から岡崎までは往復で100キロほどの距離があります。強右衛門はこの距離を１日で駆け抜けたと言われています。現代人からすれば相当な健脚。長篠の戦いの勝利が鳥居強右衛門のおかげということであれば、極端に言えば、今日の日本を築いたヒーローといってもいいですね。そうした人が三河から誕生したのは誇らしいことです。

Ａ：劇中では、家康息女・亀（演・當真あみ）と強右衛門とのやり取りがありました。亀が強右衛門のために大きいおむすびを握り、強右衛門が頬張るという微笑ましい場面もありました。一方で、信長（演・岡田准一）によって亀は奥平信昌（演・白洲迅）に嫁ぐことが決まっていたようです。劇中では、信康（演・細田佳央太）が縁談に反対していましたが、これは史実のようです。奥平家の領地は、三河と美濃と信濃三国の国境に近い位置で、今川、徳川、武田の間隙を縫うように生き残りをかけた処世術を展開してきました。これは、同じ武田配下だった真田家同様かと思います。そして、亀と奥平信昌の縁談についてですが、織田家も美濃の遠山景任に信長の伯母にあたるおつやの方を嫁がせていますから、同じような感覚で勧めたのでしょう。

Ｉ：奥平家の領地は、山奥といえば山奥。信康の気持ちもわからないではないですが、父親である家康との確執を抱えてしまいましたね。

Ａ：しかし、岡崎体育さんの強右衛門、前週の山田八蔵（演・米本学仁）とキャラがかぶっている感じもしましたが、予想以上の熱演で、最後はうるうるしてしまいました。長篠城本丸の切り立った崖から豊川（寒狭川）を潜水しながら渡り、岡崎まで走破する。これまで３回ほど長篠城跡に行ったことがありますが、この場所から武田軍の間隙を縫って行くというのは相当に難しいミッションだったと感じます。４キロも泳いだというのだから、すごいことです。磔の場面は大河史に刻まれる名シーンだったと思います。

Ｉ：強右衛門が武田軍に処刑された場所というのは長篠城の川を隔てた対岸に位置しています。訪れるたびに、対岸から叫んで本丸に聞こえるかどうかやってみたいと思っているのですが、対岸に移動するには、かなり大回りしないとたどり着けないのでいつも断念していました。

Ａ：強右衛門が大河ドラマに登場したのを機して、やってみたいですね。今はレンタサイクルもあるそうですよ。城跡にある「長篠城址史跡保存館」はこじんまりしていますが、けっこう濃密な資料が展示してあったと記憶しています。久しぶりに行きたいですね。

Ｉ：私が、ちょっと凄いと思ったのは、強右衛門が磔刑になった後に、磔になった強右衛門の旗が天空にひるがえったことです。磔にされた強右衛門の旗指物といえば、落合佐平次のものが有名ですが、さりげなく登場させるのは粋なはからいでしたね。