⼤河ドラマや時代劇を観ていると、現代ではあまり使われない⾔葉が多く出てきます。一定の理解でも番組を楽しむことはできますが、セリフの中に出てくる歴史⽤語を理解していたら、より楽しく鑑賞できることと思います。

そこで、【戦国ことば解説】では、戦国時代に使われていた⾔葉を解説いたします。⾔葉を紐解けば、戦国時代の場⾯描写がより具体的に思い浮かべていただけることと思います。より楽しくご覧いただくための⼀助としていただけたら幸いです。

さて、この記事では兵法三十六計の一つ、「空城の計(くうじょうのけい)」という⾔葉をご紹介します。

「兵法三十六計」とは、中国の伝統的兵法のこと。魏晋南北朝時代に檀道済(たん・どうせい)という武将がまとめたとも言われています。36種類の戦術・戦略のうちの一つが、「空城の計」です。甲斐の武田信玄は軍旗に、「風林火山」という孫子の兵法書の言葉を記しているように、中国から由来した兵法は日本においても実践されています。

2023年NHK大河ドラマ『どうする家康』では、三方ヶ原の戦いで信玄に敗走した際、徳川家康は「空城の計」を彷彿とさせる手を打ちます。

目次
兵法三十六計とは?
「空城の計」とは?
家康は三方ヶ原の戦いで、「空城の計」を使わなかった?
まとめ

兵法三十六計とは?

「空城の計」は三十六計に分類される兵法の一つです。まず、三十六計について整理しましょう。

「兵法三十六計」とは、先述のとおり、魏晋南北朝時代の檀道済(たんどうせい)という武将によってまとめられたとも言われています。敵の強さに応じて6系統に分かれ、6種類ごとにカテゴライズされています。権威付けのために『易経』を引用して解説している箇所も見られます。

有名な戦略に「走為上(走るを上とする)」という項目があります。「逃げるのが一番」という意味ですが、これは「三十六計、逃げるに如かず」ということわざの語源になったと言われています。三十六計は、現在中国においてもビジネス・教育などさまざまな場面で用いられ、「生活の知恵」とも言える存在です。

「空城の計」とは?

三十六計について整理したところで、次は「空城の計」について見ていきましょう。「空城の計」とは、わざと自分の城を空っぽの状態にして見せて、敵の警戒心を誘う計略のこと。一種の心理戦でもあります。

「空城の計」は、敵が圧倒的に強い場合に用いる戦術です。敵に敗走した場合、敵の方が有利な状況下にあることが多く、城に戻っても包囲によって物資の補給路を遮断されれば、降伏は時間の問題……。その際、敵にこれ以上攻撃してもメリットがない・不利益を被るかもしれないと思わせることが重要になります。

優れた指揮官であれば、罠があるのではないかと警戒感をいだき、やみくもに開かれた城の内部にまで侵入することはないからです。

なお、「空城の計」は以下のような内容で、京劇の三国志の演目にもなっています。

蜀の馬謖(ばしよく)は諸葛孔明の命を聞かず、魏の司馬懿(しばい)に敗北。孔明はその連絡に驚きますが、司馬懿の軍勢は孔明の城に迫ります。窮余の一策として、孔明は四面の城門を開き、城楼に上って酒を酌み、静かに琴を演奏。司馬懿は罠と判断し撤退するも、「空城の計」と知って再び攻めようとします。しかし、すでに趙雲(ちょううん)の援軍が到着し、結局戦わずして退きました。この弾琴の場は京劇中の名場面として有名です。

清代の『宮殿蔵画本』の諸葛孔明像(故宮博物院所蔵)

家康は三方ヶ原の戦いで、「空城の計」を使わなかった? 次ページに続きます

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