桶狭間の戦い後に生まれた井伊直政(虎松)(演・板垣李光人)。(C)NHK

ライターI(以下I):家康家臣団は「十六将」のほかに「徳川四天王」というくくりがあります。酒井左衛門尉忠次(演・大森南朋)、本多忠勝(演・山田裕貴)、榊原康政(演・杉野遥亮)ときて、井伊直政(虎松)(演・板垣李光人=いたがきりひと)の4人となります。

編集者A(以下A):劇中の佇まいを見ての通り、井伊直政(虎松)はほかの3人とは一回りほど年少になります。何しろ誕生したのが桶狭間合戦の後になりますから。この井伊直政(虎松)を演じる板垣さんは、『青天を衝け』で民部公子と呼ばれた徳川昭武(最後の将軍徳川慶喜の実弟)を演じて脚光を浴びました。

I:桶狭間合戦後の誕生ですから、本作での登場が遅くなるのはしょうがないですね。その板垣さんが心情を語ってくれました。

収録に途中から参加したので、現場の空気もできあがっている時期でした。しかも現場には素晴らしい先輩ばかりという環境。参加して間もない頃は、緊張の連続でした。でも、井伊直政も徳川家臣団に途中から加わりますし、家臣団の他のメンバーとも年齢が離れていたので、直政の思いを身をもって感じられているような気がしました。良い緊張感が芝居にもプラスに働いたかなと思っています。

A:すでに数か月現場をともにしている家康家臣団の輪の中に入るのは、転校生のような感覚だったかと思います。

I:最初はアウェー感いっぱいなんでしょうね。板垣さんはさらに、収録前に井伊家ゆかりの地に「あいさつ」に出向いたことを語ってくれました。

収録に参加するにあたっては、直政が生まれた井伊谷(静岡県浜松市)や晩年を過ごす彦根(滋賀県)など、ゆかりの地を巡りました。一番印象に残っているのは、直政のお墓がある彦根の清涼寺です。「演じさせて いただきます」とご報告でき、力をいただけたような気がしましたし、いよいよ始まるんだと、改めて気合いが 入ったのを覚えています。

 A:力強いですね。井伊直政は、6年前の大河ドラマ『おんな城主 直虎』では菅田将暉さんが演じていました。板垣さんは、菅田さんの演技も見ていたそうです。

時代劇は物語のベースに史実があります。さらに、大河ドラマは過去に同じ役を演じた先輩方もいらっしゃいます。今作の井伊直政は、例えば『おんな城主 直虎』で菅田将暉さんが演じられていたのを僕も拝見していましたし、視聴者の皆さんの中にも思い描く作品があったり、特定の役者さんの印象が強いという方もいらっしゃると思います。そうした中で、史実というベースは持ちながらも、自分なりに、「どうする家康」という世界に生きる井伊直政をつくりあげていくのはプレッシャーでもあり、特殊な環境ですよね。でも、過去作はあまり意識せず、「どうする家康」の井伊直政は僕だけが演じられる人物だと信じて演じたいと思 っています。物語の中で直政が年を重ねていく中で、自分自身も成長できるよう努めたいです。

I:板垣さんはまだ21歳。それでいながらこの骨太なコメント。ちょっとこの先頼もしい存在になりそうな予感がします。家康との出会いのシーンの回顧をどうぞ。

初めて台本を読んだ時、家康との出会い方に衝撃を受けました。特に印象に残っているのは、家康を殺そうとして捕らえられた後、遠江の民がどう感じているか、思いの丈を家康にぶつけるシーン。彼自身も家族を失い、激動の幼少期を過ごしましたが、自分のことだけでなく、乱世に生きる人たちの思いや苦しみを代弁しているようにも感じました。虎松は、親も失い、家がめちゃくちゃになり、殺伐としたものを見て育ってきた。家康と対峙した彼には相当な覚悟があり、自分自身も死ぬ覚悟すら持っていたと思います。そんな中、家康は自分の命を狙った虎松をお咎めなしで逃がしました。生きるか死ぬかの世にこんな人がいるのかと、虎松も驚いたと思いますし、その上で「自分が変わるから見ていてくれ」と言われるなんて……。逃がして貰ってから家康に仕えるまで時間はあきますが、その間も虎松は家康のことを考えていたでしょうし、心惹かれただろうと思います。辛い幼少期を過ごしたからこそ、この時代に必要なのはきっと家康のような人だと感じたでしょうし、あのシーンは演じていてぐっとくるものがありました。

A:なんだか、このシーンの前にこの話を聞きたかったなあと思いました。

I:オンデマンドか何かで見直せばいいじゃないですか。

A:いわれなくても見直しますが(笑)、 板垣さんの今後の絡みが楽しみですね。三河出身が多い家臣団の中で、遠江出身。そして美少年というキャラクター。家康との関係がどのように設定されているのか?

I:これもまた楽しみですね。

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。

●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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