織田信長の妹お市の方を演じる北川景子さん。
(C)NHK

ライターI(以下I):『どうする家康』第4回では、織田信長(演・岡田准一)の妹お市の方(演・北川景子)が登場しました。木製の薙刀で松平元康(演・松本潤)とやりあい、馬を駆って元康に清須の街を案内する快活な女性として描かれました。

編集者A(以下A):信長にはお市の方のほかにお犬の方という妹もいます。お市の方は「戦国一の美女」と形容されることがありますが、お犬の方と併せて「戦国の美女姉妹」だったようです。にもかかわらず圧倒的にお市の方の知名度が高いのは、その人生が劇的だったからでしょう。

I:その劇的な人生がどんなふうに描かれるのか? 初登場の快活なお市の方を見て胸が締め付けられる思いがしました。

A:ああ、それはそうかもしれません。元康との出会い、そして信長が元康との結婚を強いたという設定でしたし、幼いころに川でおぼれかけたところを助けられたというストーリー。元康に恋焦がれていたということですから、彼女の悲劇の人生と元康がいろいろ絡んでくる展開になってくるのかもしれないですね。

I:そのお市役の北川景子さんからコメントが寄せられました。まずは、お市の方の印象について、こんなふうに答えています。

今回演じるにあたって、市について映像や史料で勉強しましたが、若いうちに2度も結婚しますし、はじめは家や時代に翻弄された人なのかなという印象を受けました。でも古沢さんの脚本を読み込む中で、翻弄されたというより、強い意思を持って、家系の存続のために何が出来るかを考え続けた人なのだと印象が変わりました。流れに身を任せるのではなく、物心ついた時から、織田家のために何が出来るかを考えてきたのだろうなと。それからは、役が掴みやすくなりました

A:若いうちに2度結婚したというのは、浅井長政との結婚の前に実は一度嫁いでいたのではないかという説のことを言っているのですかね? なんだか、かなり深いところまでいろいろ調べているんだなという印象です。

完璧な兄がいながらなぜ元康に惹かれたのか?

I:政略結婚など、時勢に翻弄されることが多かった戦国期の女性の心情というのは現代人にとってなかなか理解できないところだと思います。それでも、少しでも近づきたいという熱い思いが伝わってきます。続けて北川景子さんの「信長観」をどうぞ。

(お市は)信長の妹ではありますが、この作品では弟のような感覚があります。どんなに頑張っても叶わない。けれど、「自分もこんな人になりたい」と尊敬して、背中を追い続けてきたのではないかと思います。岡田さんが演じる信長は絶対的王者感があって、「この人には逆らえない」という圧倒的なオーラがあります。血を分けた兄ではあっても、何を言い出すのか分からない怖さはあったでしょうけれど、市にとってはずっと憧れだったのだろうと思います

A:確かに信長は絶対的な王者でした。妹として憧れの存在だったのでしょう。「織田家のために何ができるのか」――。お市の方の決断がどういうふうに描かれるのか示唆するコメントですね。さらに北川さんは、お市が思いを寄せている元康についてこんなふうに語っています。

初めて脚本を読んだ時は、身近に完璧な兄がいながら、なぜ市は家康に惹かれたのだろうと疑問に思いました。でも、幼い頃、川で溺れた市を助けてくれたシーンでもわかるように、家康には身分や家柄は関係なく市を気にかけてくれる、誰にでも分け隔てのない優しさや、自分を偽らないピュアな真っ直ぐさがあります。寝返り、裏切り合いの戦国時代の中ですし、特に織田家は「勝つか負けるか」「0か100か」という価値観。そんな中、全く異なる感覚をもったところに、惹かれたのだろうと今は思っています

I:当欄では、今川義元や織田信長に目をかけられ、家臣団からも慕われた元康は、「希代の人たらし」だったのではないかと主張してきました。北川さんは元康の魅力について〈自分を偽らないピュアな真っ直ぐさ〉と表現しました。

A:「正直であれ」ということですかね。権謀術数、魑魅魍魎が跋扈する戦国時代にあって、最後に勝つことができたのは元康のキャラクターによるものが多かったのかもしれません。

I:そして、劇中の設定では結ばれることがなかった元康とお市の方ですが、後年、ふたりの孫が結ばれることになります。

A:秀頼と千姫……。そう思うとなんだか目頭が熱くなりますね。どんな感動ストーリーが待っているのでしょうか。

戦国の世を「おもしろき世」と語るお市。
(C)NHK

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。

●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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