越前ガニの食べごろは?

大きな越前ガニの芸であやうく滑りそうになる家康。(C)NHK

I:話が前後しますが、冒頭で家康家臣団がおいしそうにカニを食べていました。かなり大きい一杯1万5000円~3万円ほどする上物と見受けました。

A:越前ですから越前ガニ。鳥取あたりでは松葉ガニ、石川県では加能ガニ。いずれもズワイガニです。しかし、重大なことがあります。現在、越前ガニの漁期は11月6日から3月20日までと決められています。つまり、今はシーズン外。なんとも罪作りなシーンになりました(笑)。

I: 11月の予約を今から入れておけばいいのではないですかね?

A:かつて『信長全史』の取材で、一乗谷朝倉氏遺跡、劔神社(織田家発祥)、金ヶ崎城、さらには朽木谷、賤ケ岳古戦場、長浜城、小谷城、安土城などをめぐりました。一部を除けばほぼ「北陸自動車道戦国黄金ルート」です。その黄金ルートを再訪しながら越前ガニを堪能したいですね。そして、行程の中に難攻不落の山城、国吉城(福井県美浜町)を加えたいと思います。以前取材した際には雨天で登城できず、昨年訪れた際には日没直前で登城を断念しました。

I:まさに難攻不落ですね(笑)。国吉城は若狭と越前の国境付近にあって、織田方の最前線。若狭国吉城歴史資料館の大野康弘館長が地元に伝承される金ヶ崎の戦いについてリポートしてくれています(【どうする家康 満喫リポート】 金ヶ崎の戦い編)。劇中の描写とは異なりますが、実際に家康が秀吉の危急を救ったという伝承もあり興味深いですね。ところで、その蟹のシーンで左衛門尉(演・大森南朋)のえびすくいが登場しました。どこの国かと問いながら、〈美濃、京、加賀、能登、伊賀、伊勢、敦賀〉ときて〈かねがさき!〉と声がかかりました。越前では?……っていうのは野暮ですよね。

A:面白いからいいじゃないですか。秀吉(演・ムロツヨシ)が「かにすくい」で対抗してエビカニ合戦になりました。陣中での余興はあまり記録に残らない部分ですが、実際どんな余興があったのだろうって、想像力がかきたてられるシーンになりました。

I:家康の〈カニヶ崎におわしゃあす〉のシーンは笑っちゃいました。5秒以上間が空いて信長が笑ってくれたときは、なぜだかホッとしましたよ。

クズ人間にされてしまった秀吉

つかみどころのない秀吉(演・ムロツヨシ)は、家康にクズ呼ばわりされる。(C)NHK

I:さて、今週はほかにも気になる場面がありました。阿月が小豆を詰めた袋が見つかってしまった際、お市の方が、〈男なら腹を切らねばならぬな〉といいました。私は咄嗟に「そういえば女性の切腹って聞いたことないな」って思っちゃいました。

A:実は、足利義政の乳母ということで権勢を誇った今参局が切腹して自害したという説があります。1994年の大河ドラマ『花の乱』でかたせ梨乃さんが演じた人ですね。さらに江戸中期には広島の浅野吉長の正室・節姫が夫吉長が側室を持ったことに抗議して切腹したと伝えられています。

I:なんか、女性の自害というと喉を突くというイメージがありました。切腹した人もいたんですね。まさか、お市の方、切腹しないですよね。武道の達人のような登場でしたし。

A:さすがに切腹はないのではないですかね。ところで、金ヶ崎から逃れる場面で、秀吉と家康の興味深いやり取りが交わされました。なんと家康が秀吉に対して〈クズじゃな〉と言い放ちます。今週は信長に対して〈アホたわけ!〉と怒鳴ったり、小声ではありますが〈ざけんな!〉とまるで「反抗期の少年」のような言動が目立ちました。

I:将軍足利義昭(演・古田新太)がバカ殿設定だったり、明智光秀(演・酒向芳)がなんだか嫌味な設定だったり、人物描写もなかなか興味深いですよね。クズ人間といわれてしまった秀吉と家康の今後の展開が楽しみです。

A:光秀、義昭といえば、CSのチャンネル銀河で2020年の大河ドラマ『麒麟がくる』の放映が始まっています。清新な光秀が懐かしく感じちゃいましたよ。

世が世だけに、男だったら切腹もののことをやってのけたお市の方(右/演・北川景子)。(C)NHK

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。

●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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