令和の時代劇スターに注目

人質として送られた津島で信長(左/演・岡田准一)に相撲をとらされる竹千代(演・川口和空)。(C)NHK

I:元康は尾張津島で信長と初めて対面するという流れです。津島は2020年の『麒麟がくる』でも登場しました。3年前の作品ですからご記憶の方も多いのではないでしょうか。

A:『麒麟がくる』では、活気ある津島の市の様子が描かれましたが、本作では、信長が竹千代(演・川口和空)に、「かわいがり」をしている場面でした。前週も元康が今川氏真(演・溝端淳平)にチョークスリーパーをかけているようなシーンがありましたが、総合格闘技を彷彿とさせる場面が頻出している印象です。荒々しい戦国の気風、信長の気性を強調したいのでしょう。

I:あ、そうなんですか。私は格闘技を見ないのでよくわかりませんでした(笑)。ただ、「信長怖い!」と思って見ていました。しかし、岡田准一さんは『軍師官兵衛』(2014年)で大河の主演を張り、その後も『関ケ原』(2017年)、『燃えよ剣』(2021年)など歴史大作映画でも主演を務めていますから、さすがの貫禄。令和の時代劇スターのたたずまいです。

A:所属事務所でも先輩後輩の松本潤さんと岡田准一さん。時代劇の分野では先輩格の岡田准一さんとの共演がどんな核融合を巻き起こすのか? ファンならずとも注目ですね。

I:「ちょっとやそっとの絡みではきっと満足できませんよ」と演出陣にプレッシャーの槍を投擲しておきたいと思います(笑)。さて、今度は、松平昌久(演・角田晃広)が、大高城に現れて元康軍に挑みます。この松平昌久は元康とどんな関係があるのでしょうか。

A:ざっくりの説明になりますが、俗に「十八松平」というくくりがあり、松平昌久はその中の「大草松平家」の人間になります。なんでも、もともと岡崎城は大草松平家が領していたともいわれていますから、今川義元敗死の報に乗じて、奪い返しに来たという設定なのでしょう。系譜上では、元康の6代前の松平信光が共通の祖先で、同族とはいえ、九親等離れています。

I:そして、第2回の見せ場が、岡崎にある松平家の菩提寺大樹寺で住職を務める登譽上人(演・里見浩太朗)の登場です。

A:時代劇の大御所、里見浩太朗さんの登場はほんとうにほんとうに感慨深いです。前週の野村萬斎さんに続いて瞼に焼き付けたいシーンになりました。里見さんは長らく『水戸黄門』で助さん(佐々木助三郎)役(後には黄門さま役)を演じてきました。大河ドラマ『炎立つ』の安倍頼時役も強烈に印象に残っていますし、1985年の『忠臣蔵』から始まる日本テレビの年末時代劇スペシャルも懐かしく思い出されます。「僕たちは里見さんの時代劇を見て育ってきました」と言っても過言ではありませんからね。

時代劇の大御所、里見浩太朗さんが登譽上人として登場。(C)NHK

早くも登場「厭離穢土欣求浄土」

大樹寺で学ぶ榊原小平太康政(演・杉野遥亮)が「厭離穢土欣求浄土」の意味を元康(演・松本潤)に伝える。(C)NHK

I:その大御所と対峙したのが榊原小平太康政役の杉野遥亮さん。後に「徳川四天王」となる武将がここで登場です。

A:まだまだ何者でもない時代の「徳川四天王」。今後、成長していく元康とどのように関係を築いていくのか興味津々です。

I:家康が旗印にも使っていた言葉「厭離穢土欣求浄土」が早くも第2回で登場しました。その意味するところを榊原小平太に教わるという設定でした。ああいうふうに説明されると小難しいこともストンと入ってくるから不思議ですよね。

A:今後も折に触れて出てくる言葉かもしれませんね。「おんりえど ごんぐじょうど」。『麒麟がくる』で「麒麟」と漢字で書けるようになった人が続出したといいますが、「厭離穢土欣求浄土」もすらすら漢字でかけるようになりそうですね。

I:……(笑)。さらに、大樹寺では元康が歴代当主の墓前で自害しようと試みる場面が登場しました。

A:この場面、昨年BS1で放映された『どうする松本潤』を視聴した方は感慨深かったのではないでしょうか。松本潤さんは実際に大樹寺の歴代当主の墓前で手をあわせていましたからね。

I:たったそれだけのことで、印象がずいぶん変わってくるものです。真摯にそして圧倒的な熱量で家康役に向き合う松本潤さんの劇中での変化をしっかり見届けたいです。さて、自害しようとした元康のもとにやってきたのが本多平八郎忠勝(演・山田裕貴)。

A:本多平八郎が父(忠高)、祖父(忠真)ともに松平家のために討ち死にしたことを語りました。実際に忠勝の父と祖父は討ち死にしています。大久保彦左衛門の『三河物語』にも岡崎譜代衆が自ら田畑を耕して、今川家の関係者の機嫌を取り、合戦では常に先陣をあてがわれ、父や子のほか一族からも多くの戦死者が出たことを記しています。

I:この時期の松平家は苦難の連続だったんですね。ここで元康がバージョンアップします。

A:「虎」になりましたよね、あの瞬間。あ、話は変わりますが、前週に「今川義元が沓掛城で舞った舞のフルバージョンが見たい」と書きましたが、第1回放映後にTwitterの番組公式アカウントで公開されていました。事前に教えてくれたらいいのにとも思ったりもしますが、思いが通じていたことを素直に喜びたいです(笑)。

I:第1回の野村萬斎さん、第2回の里見浩太朗さん。そして第3回にはAさんが大好きな寺島進さんが水野信元役で登場します。

A:水野信元は於大の実兄。史実ではとても重要な役回りを果たした人物です。どんなふうに登場するのか、楽しみですね。

I:ラストで、於大と広忠とのやり取りで、ほんとうは「寅」ではなく「兎」だということが示唆されました。お、こういう設定できましたかと、膝を打ちたくなりました。詳細は改めてまとめたいと思います。

迷いが晴れて「虎」になった元康。(C)NHK

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康  戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。

●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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