ひげの集団、三浦義村、そして少女の死
I:と、こういう緊迫した状況の中で、ひげ面の一族郎党が胤長の赦免を求めて集まります。
A:壮観でした。すごいですね。ひげのあつらえはメイクさんなんですかね、それとも自前のひげ? いずれにしても大変な作業だったと思います。
I:義時が義盛をどんどん追いつめていく様子が、我慢なりません。ほんとうに、ほんとうに義時はひどい! ひどすぎます。
A:はからずもIさんのような思いを抱く視聴者の代弁をする形になっているのが泰時(演・坂口健太郎)。〈読めました! 読めました! 父上ははなからそのおつもりだったのですね〉と義時に突っ込みますが、義時は〈北条の世を盤石にするため和田には死んでもらう〉と言い放ちます。
I:私はついつい、「泰時、がんばって!」と手を握りしめていましたよ。
A:まあ、解せないのは三浦義村(演・山本耕史)の態度もそうかもしれないですね。なんだかんだいって、徹頭徹尾「義時派」を貫いている。同族の和田と組めば、北条とはいい勝負だと思うのですが……。
I:そうした中で、義盛の甥胤長の娘が亡くなります。義盛挙兵の流れは止まらなくなってきました。
A:劇中、政子(演・小池栄子)がいう通り、和田と三浦が組んだら〈勢力は互角となり大戦になります〉ということなんですけどね。
なぜだか「きのこ」が頭の中をぐるぐるめぐる
I:そして一計を案じた政子が考え出したのは、義盛を女装させて御所に呼び出すということ。〈わが家に伝わる秘策〉〈一勝一敗〉というフレーズが心に沁みました。頼朝が女装して逃げた第1話、そして木曽義高(演・市川染五郎)が女装して逃げようとして結局失敗したこともありました。それにしても義盛の女装とは……。
A:女装した義盛、実朝、政子などが一堂に会して、合戦を回避しようとします。私がハッとしたのは、実朝が義盛を双六に誘ったシーンです。「ああ、また義時が嫉妬しちゃう」と感じてしまいました。
I:あ、それは私も感じました。直後に政子とのやり取りがありましたが、和田を滅ぼすのは鎌倉のためと言い張ります。さすがに政子に〈鎌倉のため、鎌倉のため、聞き飽きました〉と怒鳴られます。これまでも義時は「女性はきのこが好き」と思い込んでいることから、義時は思い込みの激しい人物ではないかということについて触れてきましたが、政子とのやり取りを見て、私の頭の中では、「きのこ」がぐるぐるめぐってしまいました。
A:もはや、義時の頭の中では、「和田を討たねばならない」「討つ以外の道はない」という思いが反芻されていたのでしょう。それでもいったん合戦は回避されたように見えました。
I:最後の最後にも、義盛が義時に〈政はお前に任せる〉言いながら、〈ウリンが待ってる。行って来るわ〉と言ってしまいます。「あ、それ言っちゃダメ」と思いましたが、時すでに遅しでした。
A:行き違いも起きて、いよいよ幕府創設後の鎌倉最大の合戦が始まります。手に汗握らせておいて、つづきは次週とは……。
I:待ちきれないですね。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『半島をゆく』、鎌倉歴史文化館学芸員の山本みなみ氏の『史伝 北条義時』などを担当。初めて通しで見た大河ドラマが『草燃える』(1979年)。先日、源頼朝のもう一人の弟で高知で討たれた源希義の墓所にお参りした。
●ライターI:ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2022年1月号 鎌倉特集も執筆。好きな鎌倉武士は和田義盛。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり