今回は編集部による「番外編その1」です。

いまからちょうど40年前の1982年10月1日、日本で世界初の音楽CDが発売されました。それから、10年経たずしてLPに代わり音楽メディアの中心となって現在に至るCDですが、最近ではCDリリースなし、サブスクリプション・サービス(以下サブスク)オンリーという新譜も珍しくなく、(頑固な?)CD派ももうサブスクを無視できないところまできてしまっています。

日本レコード協会発表のデータによれば、2021年のCDの生産枚数は、5年前の2016年に比べて約68%にまで減少しています。一方、2021年末までに、約50曲がストリーミング1億回超再生、3曲が5億回超再生の認定がされるなど、数字の上でもマーケット構造の激変は明快です。この現況は「それはポップスの話でジャズは別」とはいえません。新譜も旧譜もCDでのリリースが減り、サブスクがメディアの中心になることは明らかです。唯一CDにアドヴァンテージがあった「音質」も、一部サービスではスペック上CDをはるかに超えるハイレゾ配信が2020年から始まり、CDはますます「旧世代メディア」化しています。

日本でサービスを展開しているおもなサブスク4社のサービスを見てみましょう。

サービス名称配信曲数ハイレゾサービス開始
Amazon Music Unlimited約9000万曲2015年11月
Apple Music約9000万曲2015年6月
Spotify約5000万曲×2016年9月
YouTube Music約8000万曲×2015年11月
(曲数は通常音質曲。サービス開始は前身含む日本でのサービス。いずれも各社のサイトによるデータ)

少ないもので5000万曲! すごい曲数です。Amazonが 2015年にサービスを開始した時(Amazon Prime Music)は100万曲でしたので、その膨張スピードはすさまじいものがあるといえます。価格は無料を含むさまざまなプランがあり、またハイレゾは対応再生デバイスが必要になるので、どのサービスがベストかはここでは判断しませんが、どれであっても、CDを購入することとコスパは比較になりませんね。ただしCDの「最後の砦」がひとつだけあります。それはクレジットとパーソネルなどの「データ」と「解説」、いわゆる「ライナーノーツ」がついていること。ジャズ鑑賞では、とくにデータは絶対に無視できないだけに、そのためにCD購入から離れられないという声もよく聞きます。

しかしこれも近年、Amazon Music Unlimitedでは「X-Ray」、Spotifyでは「楽曲クレジット」というメニュー(いずれもiPhoneアプリでの表示)から、一部の音源のパーソネルや歌詞が表示されるようになりました。とはいうもののジャズでは不十分なものが多く、まだまだこれだけはCDが有利といえます。例を見てみましょう。1950年代のジャズ名盤、ソニー・ロリンズの『サキソフォン・コロッサス』の「セント・トーマス」を聴くとき、各アプリではこう表示されます。


Amazon Music Unlimited
 feat.トミー・フラナガン、ダグ・ワトキンス&マックス・ローチ/作詞作曲:ソニー・ロリンズ/ダブルベース:ダグ・ワトキンス、テナー・サックス:ソニー・ロリンズ、ドラム:マックス・ローチ、ピアノ:トミー・フラナガン/トリビア2題(オリジナル・アルバム発売日、Amazon Musicでのチャート)

Apple Music
feat. Tommy Franagan, Doug Watkins & Max Roach

Spotify
アルバム・1957年/アーティスト:doug Watkins、マックス・ローチ、ソニー・ロリンズ、Tommy Franagan/作曲家:ソニー・ロリンズ

YouTube Music
アルバム・1956年/feat. Tommy Franagan, Doug Watkins, Max Roach/Wikipediaからの100字程度のアルバム紹介


Amazon Music Unlimitedがもっとも情報量が多いですが、どれも肝心な録音日についての記載がありません。記載の年が発表年か録音年かも不明です。結局調べ直さなければならないというところです。やはり、下記くらいの説明はほしいところですよね(熱心なジャズ・ファンならこれはもうソラで言えるほどだと思いますけど)。


ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)「セント・トーマス(St. Thomas)」
作曲:ソニー・ロリンズ
演奏:ソニー・ロリンズ(ts)、トミー・フラナガン(p)、ダグ・ワトキンス(b)、マックス・ローチ(ds)
録音:1956年6月22日
収録アルバム:『サキソフォン・コロッサス』(Prestige)

●ソニー・ロリンズ
(1930年9月7日 – )サックス奏者。ニューヨークで生まれ。1951年に初リーダー作を録音。1955年にクリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテットに参加。翌年のブラウンの死去によるグループ解散後は、現在にいたるまでリーダーとして「我が道を行く」活動を続けています。長いキャリアだけに多くのアルバムを発表していますが、ロリンズの代表作といえば現在でも『サキソフォン・コロッサス』の名が挙がります。

とはいっても、このためだけに数千円のCDを買うのはあまりにコスパが悪いですよね。ググればいい? たしかにそのとおりですが、実際やってみると面倒ですよ。ならばライナーノーツだけを買えばいい。そう、それが正解。それを形にしたのが、その名も『プレイリスト・ウィズ・ライナーノーツ』(小学館スクウェア)という電子書籍シリーズ。これは、サブスク最大の弱点を補完した、サブスクが飛躍的に楽しく聴ける「新しいメディア」といえるもの。簡単にいえば、「コンピレーションCD」のサブスク版。ひとつのテーマで1巻20曲〜100曲のプレイリストが作られていて、それぞれの詳細データと解説(ライナーノーツ)が掲載されています。そしてそこから1クリック(またはQRコード読み込み)で、サブスクにアクセスして音楽を聴くことができるのです。プレイリストはAmazon Music Unlimited、Apple Music、Spotify、YouTube Musicの4社に対応(1冊に全部載ってます)。どこと契約していても、同じプレイリストを聴くことができます。

『絶対名曲』シリーズに続く、最新第2シリーズは『サブスクで学ぶジャズ史』。先ほどの『サキコロ』のデータは、その第4巻『黄金時代の到来〜1950年代 part1』からでした(選曲・解説は連載本編担当の池上信次氏)。サブスクの楽しみ方がきっと変わると思います。ぜひお試しください。
(次回に続く)


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