大河ドラマ史に残る名場面、畠山重忠と北条義時の一騎打ちシーンの裏側
ライターI(以下I):61作に及ぶ大河ドラマ史上屈指の名場面となった畠山重忠と北条義時の一騎打ちを放送するにあたって重忠役の中川大志さんの取材会が行なわれました。中川さんは24歳ですが、すでに大河ドラマ出演4作目。北条義時役の小栗旬さんと同じような軌跡を歩んでいるような印象です。
編集者A(以下A):そうなんです。大河4作目までを比較したのが別表(※1)ですが、ゆくゆくは中川大志さんも大河で主演を張れるような俳優だと思っていました。今回の取材会での話を通じて、それは遠からず絶対に実現するなという印象を受けました。
I:私も、中川さんを主人公にした場合に誰を演じたら、と頭の中で反芻しましたよ。さて、中川さんは畠山重忠を演じることについて、〈知れば知るほど畠山重忠という人物に引き込まれた〉〈後世に畠山重忠という人物が語り継がれている意味も理解しつつ、自分もしっかりと畠山重忠を再現しないといけないなと考えて演じた〉と語っていました。『鎌倉殿の13人』第36回では、畠山重忠と北条義時の一騎打ちが大河ドラマ史に残る名場面と話題を集めましたが、そのことに触れた中川さんの話も、制作現場の熱量を教えてくれる熱い言葉の連続でした。まずは「一騎打ちシーン」に触れたお話をどうぞ。
〈「一騎打ちのシーン」は台本上のト書きには、「小四郎と重忠の一騎打ち」としか書いてなかったんです。その台本が届いたタイミングで、小栗(旬)さんとこのシーンについて話す機会があったんです。小栗さんから「一騎打ちのシーンは、綺麗な立ち回りではなく、すごく泥臭いものにしたい」という話がありました。そのとき、すぐに「僕も同じ意見です」というやり取りをしたことを覚えています〉
A:熱いですね。濃いですね。たまらないですね。義時と重忠は義時が1歳年長で、重忠は義時の妹を妻にしていますから義兄弟。若いころからお互いに知った存在だったということになります。中川さんはそうした関係に触れつつ、一騎打ちシーンについて小栗さんと語り合った内容を明かしてくれました。
〈重忠と義時は、10代の頃から知っている、幼馴染のような関係。最初は敵だったこともありましたが、重忠が頼朝の配下になってからはともに過ごしてきたわけです。そういう関係ですから、最後は子供の喧嘩のように、思い切り泥臭く戦えたらいいよねという話を小栗さんから頂いたんです〉
I:この後、さらに小栗さんがとっても大きな提案を口にするんですね。
〈ここで小栗さんから、「俺は畠山重忠という男にぶん殴られたいんだよね」という話がありました。そこから、監督とアクションチームの方、小栗さんとリハーサルを重ねながら、いろいろな動きをどうするか相談しながらあの場面を作り上げていきました。素手で殴り合った、あの一発、一発に畠山重忠の生きざま、信念、この戦をする意味をあのシーンで凝縮して演じられたんじゃないかと思っています〉
A:あの数分のシーンにそんな熱いエピソードが秘されていたとは感慨深いです。メイキングシーンとか別番組でやってくれないか! というレベルですね。
I:緑が映える草原でのロケは都合3日間かけたそうです。中川さんはロケのこぼれ話も語ってくれました。
〈一騎打ちのシーンで、馬から落ちたところが僕のクランクアップ。3日間の最後の最後で、本当に満身創痍という感じで、この夏の暑さの中3日間。スタッフの皆さんも大変だったと思います。本当に死闘。小栗さんも僕も体力的にもボロボロで。あのアクション、トータルで何分間殴り合っていたのか、僕としては記憶にないのですが、体感としては本当にあっという間だったんですよ。1、2分の間かと思っていますが、たぶん現場では10分とかそれくらいだったと思います。歴代の大河ドラマで、あそこまで着物と鎧が破壊されたシーンはなかったんじゃないかなと。着物はびりびり、鎧もいたるところが破損して、最後は原型をとどめていなくて〉
【印象に残った和田義盛と畠山重忠のやり取り。次ページに続きます】