石炭輸送が最盛だった面影

所蔵:中村俊一朗
国鉄が当時(昭和43年)の全国の路線網を4枚に分けて製作した「日本国有鉄道案内図」。このうち、「中国・四国・九州」の九州北部を拡大した地図である。筑豊地方には、鉄道網が大都市並みに発達していた。最も栄えた頃の活気がうかがえる鉄道地図である。
筑豊地方には明治から昭和にかけて、日本の経済を支えた数え切れないほどの炭鉱が存在した。産出した石炭を、若松や小倉などの積み出し港に運ぶため、網の目のように線路が張りめぐらされていた。沿線には炭鉱に従事する人々が住み、乗客も多かった。この地図が製作された昭和40年代、石炭産業はすでに斜陽にあったが、この地図からは華やかなりし頃の余韻が読み取れる。
閉山が相次ぎ、利用が激減
1960年代に起きたエネルギー革命により、石炭の需要は激減し、炭鉱の閉山が相次ぐ。鉄道を支えた石炭輸送が減り、人々が炭鉱を去ると赤字路線に転落した。国鉄は、この地図が発行された昭和43年(1968)に、廃止かバスへの転換を検討する赤字路線83線を選び、筑豊地方ではその翌年にまず幸袋線(こうぶくろせん)が廃止された。
さらに昭和55年(1980)にいわゆる「国鉄再建法」が公布されると、1日の利用者が4000人未満の路線を国鉄の経営から切り離し、廃止することが決まった。勝田線、添田線、室木線(ともに昭和60年廃止)などがその対象となり、漆生線(うるしおせん)が昭和61年(1986)、上山田線が昭和63年(1988)に、国鉄の分割民営化を前に廃止された。
石炭輸送が中心だった筑豊の各鉄道は、筑豊本線、のちに私鉄の平成筑豊鉄道の一部となった伊田線や田川線が、通勤・通学を担う路線に変貌を遂げて今に至る。
文/遠藤則男 撮影/藤岡雅樹(小学館写真室)
2022年9月29日、ついに発売!
小学館100周年企画 鉄道開業150年『日本鉄道大地図館』
明治から令和の鉄道地図を収録

所蔵:鉄道博物館

監修:今尾恵介 定価:3万9600円(税込み) 仕様:A3判 418ぺージ 上製本 ケース付き
※詳しくはWeb特設ページをご覧ください。
https://www.shogakukan.co.jp/pr/tetsudou_chizu/
公式Twitter:@tetsudou_chizu
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所蔵:横浜都市発展記念館
2.復刻版「運転事務用鉄道線路図」

所蔵:鉄道博物館

監修:今尾恵介 定価:3万9600円(税込み) 仕様:A3判 418ぺージ 上製本 ケース付き
※この記事は『サライ』本誌2022年10月号より転載しました。
