同じような経験と考え方を持つ人は少なくないのではないでしょうか。

祖父の兄弟姉妹に聞くと、一連の言葉は祖父の父・忠順さんが、祖父に言っていた言葉だったそうです。曾祖父は、祖父が長野に疎開中も毎週、激励の手紙を書いて送っていました。疎開中、祖父はいじめを受けていました。曾祖父の手紙が、祖父の心の支えになっていたのでしょう。

疎開から戻った際、祖父が曾祖父にお礼を言おうとすると、「自分ではなく、他の誰かに返してやってくれ」と言われたらしいのです。

筆まめで、多いときは年間4万通ものハガキや手紙を書いていた祖父ですが、「誰かに返す」ことを、まさに実践していました。

ラジオで46年間パートナーを務めた元TBSアナウンサーの遠藤泰子さんも、その一人です。あるとき交通事故を起こし、出演番組すべてを降板となった時期があったそうです。そのときに祖父からもらった手紙を僕に見せてくれましたが、そこにはこんな主旨のことが記されていました。

“まァ、暫くやすみなさい。来週まできついでしょうけど、それはガマンしなさい。とに角、あなたでないと、僕は困るのであります。不愉快なことがこれだけ続けば、泰子は「いいオンナ」になることうけあいます。一人で考え込まないように”

遠藤さんはこの手紙を宝物のように大切にしてくださっています。

言葉は口に出すだけでなく、紙に書き綴ると、また違う魅力を持つものだと実感させられました。僕も大切なことは紙に綴っていきたいと思います。

永六輔の今を生きる言葉

生きているということは、誰かに借りを作ること
生きていくということは、その借りを返してゆくこと

* * *

永六輔さんの7回忌の節目に、永さんの背中を追い続けてきたさだまさしさんと永拓実さんが『永六輔 大遺言』を刊行する。

『永六輔 大遺言』(さだまさし、永拓実 著)
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さだまさし
長崎県長崎市生まれ。1972年にフォークデュオ「グレープ」を結成し、1973年デビュー。1976年ソロデビュー。「雨やどり」「秋桜」「関白宣言」「北の国から」など数々の国民的ヒットを生み出す。2001年、小説『精霊流し』を発表。以降も『解夏』『眉山』『かすてぃら』『風に立つライオン』『ちゃんぽん食べたかっ!』などを執筆し、多くがベストセラーとなり、映像化されている。2015年、「風に立つライオン基金」を設立し、被災地支援事業などを行なう。

永拓実(えい・たくみ)
1996年、東京都生まれ。祖父・永六輔の影響で創作や執筆活動に興味を持つようになる。東京大学在学中に、亡き祖父の足跡を一年掛けて辿り、『大遺言』を執筆。現在はクリエイターエージェント会社に勤務し、小説やマンガの編集・制作を担当している。国内外を一人旅するなどして地域文化に触れ、2016年、インドでの異文化体験をまとめた作品がJTB交流文化賞最優秀賞を受賞。母は元フジテレビアナウンサーの永麻理。

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