「言葉の天才」と呼ばれた永六輔さん。その「言葉」によって、仕事や人生が激変した著名人は数知れない。永さんと長く親交があったさだまさしさんと孫・永 拓実さんが、「人生の今、この瞬間を有意義に生きるヒント」をまとめた文庫『永六輔 大遺言』から、今を生きるヒントになる言葉をご紹介します。

文/永拓実

生きるとは「誰かに借りを作り、その借りを返してゆくこと」

“生きているということは、誰かに借りを作ること。生きていくということは、その借りを返してゆくこと”

祖父が繰り返し使っていた言い回しですが、僕はこの言葉を聞くと、ある出来事を思い出します。

小学生だった僕はある日、兄と両親と中華料理屋に行きました。食事中、トイレに行こうと思い、席を離れました。しかしどちらが男子トイレか表示がわかりにくく、扉の前で立ち尽くしてしまいました。

まだ小学生、店員に話しかける勇気もなく、ただキョロキョロしている。そんな僕を見て、近くの席に座っていたお兄さんがわざわざ僕のところへやって来て、「こっちだよ」と連れて行ってくれました。

無事にトイレを済ませたあと、お礼を言おうと思い、さっきのお兄さんの席に行って顔を見ると、なんとその人は、大野智さんでした。

このときの経験を思い出すと、今でもつい興奮してしまいます。

超有名グループのリーダーに助けられたということではなく、テレビの中でしか見ることができなかった“すごい人”も、僕みたいな無名の子どもを手助けするという事実が嬉しくて仕方なかったのだと思います。

冒頭で紹介した祖父の言葉には続きがあります。

“誰かに借りたら誰かに返そう。誰かにそうしてもらったように、誰かにそうしてあげよう”

僕は街中で困っている人、とくに子どもを見ると、何かを手伝ってあげたいという衝動に駆られます。おそらくそれは、自分が幼い頃、大野さんに助けられた記憶があるからだと思います。

「自分ではなく、他の誰かに返してやってくれ」次ページに続きます

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