「言葉の天才」と呼ばれた永六輔さん。その「言葉」によって、仕事や人生が激変した著名人は数知れない。永さんと長く親交があったさだまさしさんと孫・永 拓実さんが、「人生の今、この瞬間を有意義に生きるヒント」をまとめた文庫『永六輔 大遺言』から、今を生きるヒントになる言葉をご紹介します。

文/永拓実

自分の損得を考えて人と付き合わない

祖父は多彩な人脈でも知られる人でした。

中学生の頃に知り合って以来、親交を重ね、祖父の遺志を後世に伝えようと、「最後の対談」の相手を務めたシンガーソングライターのさだまさしさん。さださんは、祖父の人脈や人間関係のあり方についてこう分析しています。

「永さんは他人との付き合いの距離感を変えない人だった。自分の損得を考えて、人と付き合わない。この人は偉くなりそうだから仲良くしておこう、この人はそうでもないからまあいいや、という考え方を絶対にしない。だから僕を含めて、あれだけ多くの人に慕われたんだと思います」

たしかに祖父は、とあるインタビューの中で、「永さんの多岐にわたる人間関係は、自分なりに整理整頓されているのか?」と問われ、次のように答えています。

“整理なんかしない。それは順位をつけるということでしょう。大事な人、次に大事な人って。そんなバカなことはしない”

ファンの方々からいただいたハガキすべてに返事を書き、どんなに小規模の講演会でも呼ばれれば足を運ぶ。

一緒にロケに行ったスタッフやマネージャーには、ロケ先から「お疲れ様」と書いてハガキを出し、みんなが家に戻ったら届いているように取りはからう。

自分の生活とは直接関係のない職人さんの仕事のため、尺貫法復権運動を10年以上にわたって展開……。さださんはこう続けます。

「まず自分が興味を持った人にはすぐに会いに行く。とにかくその行動力が半端じゃない。一方で、自分に会いたいという人にはとりあえず会い、自分の目でその人のことを確かめる。だから、人脈はどんどん広がる。そして、どんなに忙しくなっても、偉くなっても、相手との付き合いの距離感を変えない。それが相手に信頼される秘訣だと思います」
 
祖父の「お別れの会」で印象的だったのは、参列者のものすごい数や名だたる著名人の顔ぶれだけでなく、本当に心から涙を流しているファンの方々が実に多かったことでした。あの光景を見て僕は、祖父がどれだけ「愛されていたか」ということを、改めて思い知りました。

“尊敬されるのは、それなりの努力でなんとかなる。愛されるとなると、これはなかなか難しい”
これも祖父の言葉です。

今、仕事などで成功して尊敬されている人はたくさん思い浮かびますが、さらに愛される人とまでなると、なかなか思い浮かびません。祖父の人間関係の一端を垣間見ると、人付き合いのあり方についても学ばされます。

永六輔の今を生きる言葉

人間関係に順位をつけない
損得を考えずに人と付き合おう

* * *

永六輔さんの7回忌の節目に、永さんの背中を追い続けてきたさだまさしさんと永拓実さんが『永六輔 大遺言』を刊行する。

『永六輔 大遺言』(さだまさし、永拓実 著)
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さだまさし
長崎県長崎市生まれ。1972年にフォークデュオ「グレープ」を結成し、1973年デビュー。1976年ソロデビュー。「雨やどり」「秋桜」「関白宣言」「北の国から」など数々の国民的ヒットを生み出す。2001年、小説『精霊流し』を発表。以降も『解夏』『眉山』『かすてぃら』『風に立つライオン』『ちゃんぽん食べたかっ!』などを執筆し、多くがベストセラーとなり、映像化されている。2015年、「風に立つライオン基金」を設立し、被災地支援事業などを行なう。

永拓実(えい・たくみ)
1996年、東京都生まれ。祖父・永六輔の影響で創作や執筆活動に興味を持つようになる。東京大学在学中に、亡き祖父の足跡を一年掛けて辿り、『大遺言』を執筆。現在はクリエイターエージェント会社に勤務し、小説やマンガの編集・制作を担当している。国内外を一人旅するなどして地域文化に触れ、2016年、インドでの異文化体験をまとめた作品がJTB交流文化賞最優秀賞を受賞。母は元フジテレビアナウンサーの永麻理。

 

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