ニューノーマルの時代の今、「自分はこのままでいいのだろうか?」「新しいことを学びたい」と考えている大人たちは多いのではないでしょうか? しかし、仕事に家庭にと、日々やることが多く、なかなか学ぶ時間がとれない。

そんな悩める大人のみなさんに、英検1級をはじめ、130超の資格取得を果たした翻訳家・宮崎伸治さんの著書『自分を変える! 大人の学び方大全』から、語学学習のコツをご紹介します。

文/宮崎伸治

適切な教材と検定試験がある外国語にチャレンジ

ほとんどの日本人は高校までで6年以上英語を学習する。さらに大学に進学した人は第二外国語(大学によっては第三外国語も)を学習する。それを前提に英語以外の言語を学ぶとしたら何語を学ぶのがいいかを考えてみよう。

もちろんこれは最終的にその言語を習得して何をしたいのかによって変わってくる。たとえば、習得後にその知識やスキルを年収アップなどの手段としたいと思っている人とそうでない人とでは、選ぶ言語が異なる(たとえば、通訳になりたい人なら通訳の仕事の需要がありそうな言語を選ぶのがよく、翻訳家になりたい人なら翻訳の仕事の需要がありそうな言語を選ぶのがよいといった具合である)。

また、その言語が話されている国に対する興味の度合いによっても異なる。したがって、どの言語を学ぶべきだというだれにでも共通する一つの正解があるわけではない。

ここでは外国人と接する機会がほとんどない日本人が独学で「読む愉しみ・聴く愉しみ」を味わえるようになるという前提で考えてみよう。

独学で「読む愉しみ・聴く愉しみ」が味わえるようになる最低条件として、私は次の4つを挙げたい。逆にいえば、この4つの条件をクリアしていなければ、「読む愉しみ・聴く愉しみ」に到達するのは極めて困難だと考えている。

1.入門書(文法書も含む)が入手できること

これが一番重要である。どの言語でもいきなり本が読めるはずはないから、入門書はどうしても必要である。何十冊もそろえる必要はないが、数冊は入手したほうがいいだろう。

フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、中国語、韓国語といったメジャーな言語であれば容易に入手できるが、マイナーな言語になると入手できないものもあろう。マイナーな言語を学んでみたいという人は、まずは入門書が入手できるかどうか確かめてみよう。日本語で書かれている入門書があればそれが理想的だが、仮にない場合でも、英語が読めるという人なら英語で書かれた入門書(たとえば『Teach Yourself』のシリーズを使うという手もある。

2.その言語が話されている国から出版されている音源付きの書籍を入手できること

入門書だけで学習してそれで満足する人などほとんどいないだろう。入門書に取り組むのは、野球でいえばピッチングマシンから投げられる球でバッティング練習をするようなものである。ピッチングマシンから投げられる球が生きていない球であるのと同じように、入門書の文は人工的なものがほとんどである。

そこに「読む愉しみ・聴く愉しみ」を見出そうとしても無理がある。野球の醍醐味はバッティング練習ではなく、試合をすることで味わえるのと同じで、外国語学習の醍醐味も「バッティング練習(入門書を用いての学習)」ではなく、「試合(その言語を意思伝達のために使うこと)」にある。

ただ、ほとんどの日本人にとっては英語以外の言語に接する機会はあまりないので、「試合」をするにはその言語が話されている国から出版されている書物を読むのが一番である。フランス語の場合はフランスの出版社から出ている書物、ドイツ語の場合はドイツの出版社から出ている書物、という具合だ。

私の場合、それに音源(CDまたはMP3)付きの書籍があることを条件としている。なぜなら私は音源の助けを借りなければなかなか読書が進まないからである。

テキストだけでは読み続けにくくても音源の助けがあればなんとか食らいついていけるし、読むのに疲れたときはベッドに横たわって聴くことに専念するという学習も可能となる。また、音源の付いている書籍であれば、リスニング力も同時に磨けるのも魅力である。

音源付きの書籍が何らかの方法で入手できるかとうかを確認してみよう。これらを扱っている書店があるのがベストだが、仮になくてもインターネット経由で入手できるかどうかも確認してみよう。

3.日本で受けられる検定試験があること

「読む愉しみ・聴く愉しみ」が味わえるようになるには、少なくとも中級レベルまでは到達すべきだというのが私の考えである。

というのも、初級レベルでは「聴く愉しみ」が味わえるほどのリスニング力はついていないし、初級レベルの本で「読む愉しみ」を味わえるにしても初級レベルの本自体が少ないからだ。ところが中級レベルに到達すれば、読める本の数はぐんと増えるし、「聴く愉しみ」も徐々に味わえるようになる。初級レベルで終わらせるのはとてももったいない。

私には中級レベルまで到達するには検定試験の存在が絶対に必要だった。なぜなら、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、中国語のいずれも、やってもやらなくても生きていくうえで何の不都合も生じない。そんな「やってもやらなくてもいい」ことを独学で続けるにはモチベーションが必要たったわけだが、その最も大きなモチベーションになってくれたのが検定試験たった。

ちなみに本稿執筆時点で英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、中国語、韓国語、ロシア語は日本で受けられる検定試験がある。

4.電子辞書が存在すること

便利な時代になったもので、いまや英語以外の外国語も電子辞書がある。私の場合、電子辞書が入手できるか否かも学習する言語を決める条件に入っていた。なぜなら、語尾変化が複雑なヨーロッパの言語を紙の辞書で引くとなると、おそろしく時間と労力がかかるので途中で投げ出すのが目に見えていたからである。

以上、新たに学ぶ外国語を選ぶときの私の条件を4つ挙げたが、これらの4つのすべての条件がそろうのは、現在の日本では、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、中国語、韓国語、ロシア語くらいだろう。

ただし、4つの条件はあくまでも私にとってのものである。であるから、たとえば電子辞書がなくてもかまわないという人であれば、4の条件は外して考えてもいいことになる。重要なことは自分で新たに学ぶ言語の条件を考えてみることである。

* * *

仕事や生活などで外国語を使う必要に迫られていない場合、なかなか学習するモチベーションを維持することが難しいですが、そんな時は検定試験を活用するとよいのですね。やはり学びには、目標設定が必要です。

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宮崎伸治(みやざき・しんじ)
青山学院大学国際政治経済学部卒業。英シェルフィールド大学大学院言語学研究科修了。大学職員、英会話講師などを経て出版翻訳家となり、著訳書は60冊以上。金沢工業大学大学院工学研究科修了、慶応義塾大学文学部卒業、英ロンドン大学哲学科卒業、および神学部サーティフィケート課程修了、日本大学法学部、および商学部卒業。英語・翻訳関係の資格をはじめとする133種の資格を取得。英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、中国語の原書を読むことが趣味でありライフワーク。日々ボキャブラリー力アップに心血を注ぐ。主な訳書に『7つの習慣 最優先事項』(キングベアー出版)、近著に『出版翻訳家になんてなるんじゃなかった日記』(三五館シンシャ)などがある。

 

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