はじめに-北条家の人々

源氏と平氏との熾烈な戦いが繰り広げられた平安後期。伊豆の豪族・北条家は、源頼朝と繋がりを持ち、彼を支える一族になります。では、そんな北条家にはどのような人々がいたのでしょうか。今回は、幕府の執権となった義時の兄妹である宗時や阿波局など、北条家の人々を紹介していきます。

目次
はじめにー北条家の人々
各人物の紹介
まとめ

各人物の紹介

ここからは、義時の兄・北条宗時、義時の妹・阿波局、頼朝の長女・大姫、時政の後妻・牧の方を取り上げ、紹介していきます。

北条宗時

北条宗時(むねとき)は、鎌倉幕府初代執権・北条時政の嫡男で、頼朝の妻・政子の弟(もしくは兄)にあたる人物です。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、義時の兄で、平家打倒を訴える熱き夢想家(演:片岡愛之助)として描かれます。生年も含めてその生涯には不明な点が多く、北条政子が妹か姉かも明らかになっていません。

もともと平家の家人で、伊豆に流された源頼朝を監視する役割を担っていた北条氏でしたが、頼朝と政子の結婚を経て、源氏側につくこととなります。治承4年(1180)8月、頼朝が平氏打倒を掲げて挙兵に及ぶと、義兄弟の関係にあった宗時も父や弟らと共にこれに加わりました。

宗時はまず、平家方の伊豆目代・山木兼隆(やまきかねたか)の襲撃の先導役を務めます。山木邸を攻め、これを討ち取ったことで、源氏は見事に初戦で勝利を収めたのでした。その後、頼朝軍は大きな兵力を誇る平氏側の大庭氏・伊東氏との対決に備え、相模国の三浦氏との合流を目指します。しかしその途上、石橋山にて平家方・大庭景親(おおばかげちか)率いる3000もの軍勢と交戦し、圧倒的兵力の差で大敗を喫します。

軍勢が散り散りとなる中、宗時は伊豆へ落ち延びようとした途中、本領である北条に程近い伊豆平井郷(=現在の静岡県函南町)の早川にて、平家方の伊東祐親(すけちか)の軍勢に囲まれ、討ち取られました。

阿波局

阿波局(あわのつぼね)は北条時政の娘で、源頼朝の妻・政子の妹に当たる人物です。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、義時の妹で、成り上がる北条家の冷静な皮肉家(演:宮澤エマ)として描かれます。

初代執権となる北条時政の娘であり、義時と政子の妹である阿波局は、武将・阿野全成(あのぜんしょう)の妻となります。全成は源頼朝の異母弟であり、頼朝の挙兵にあたり京都から駆けつけた人物です。また、建久3年(1192)に頼朝の次男・実朝(さねとも)が生まれると、叔母に当たる阿波局は実朝の乳母となりました。

阿波局がきっかけとなったとされる、一つの事件があります。それが、正治元年(1199)の梶原景時(かげとき)粛清事件です。頼朝の死によって「十三人の合議制」を敷くこととなった鎌倉幕府では、将軍からの信頼が厚かった梶原景時が他の御家人の反感を買っていました。

そんな時、梶原景時が、2代目将軍・頼家に有力御家人の結城朝光(ゆうきともみつ)について讒言しました。これを事前に知った阿波局は、朝光に景時の讒言を告げます。これをきっかけに朝光は他の御家人を集め、景時を失脚させたのでした。

また、建仁3年(1203)に起こった夫・阿野全成の謀反・没落も、阿波局が父・時政や姉・政子の指示で端緒をつくったとみられています。このように北条氏の一員として、一族の成り上がりに一役を買った女性でもあったのです。

大姫

大姫(おおひめ)は源頼朝を父に、北条政子を母に持つ人物です。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、頼朝の愛娘で、父の野望に巻き込まれていく純朴な少女(演:南 沙良/幼少期演:難波ありさ)として描かれます。

彼女は、頼朝の伊豆配流中である、治承2年(一説には同3年)に生まれました。5、6歳の頃、木曽義仲の長男・木曽義高(よしたか)(当時11歳)と婚約し、許嫁となります。しかし、後に義仲が敗死すると、鎌倉にあった義高も頼朝によって殺されたのでした。

そのために、大姫は愁嘆のあまり病身となり、一生を鬱病で過ごしたとされています。両親の望む頼朝の甥・一条高能(たかよし)との縁談も拒絶しました。

また、建久6年(1195)、娘の入内工作に着手した頼朝夫妻に同行する形で、大姫は上洛することとなります。後鳥羽天皇の後宮に入れる話でしたが、こちらも成立せず終わります。この大姫の入内問題をきっかけに、頼朝と九条兼実(かねざね)の関係が悪化したことで、兼実ら親幕派公卿の失脚を招いたとされています(=建久7年の政変)。

そして、父親の野望に結婚という形で巻き込まれた大姫は、建久8年(1197)に死去。19、20歳の若さでこの世を去ったのでした。

牧の方

牧の方(まきのかた)は、幕府初代執権・北条時政の後妻となる女性です。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、義時の継母で、夫の欲をあおり権力の座へ導く存在(演:宮沢りえ)として描かれます。

彼女は、平安時代末期の駿河国大岡牧(=現在の沼津市)の豪族・牧宗親(むねちか)の娘(または妹)とされます。都で時政に見初められ、伊豆に下って後妻となったのでした。ただ、宗親が平頼盛(よりもり)の家人であったので京都との繋がりが深く、建久2年(1191)9月には上洛しています。娘たちの中には公家・殿上人に嫁いだものもいたとされています。

元久元年(1204)11月、娘婿である平賀朝雅(ともまさ)が畠山重忠(しげただ)の子・重保(しげやす)と争ったとき、夫である時政に讒言します。それにより、畠山一族は時政の命により滅ぼされたのでした。

しかし、この事件の処理をめぐって時政の先妻の子である政子・義時との間に隔絶が生じます。その後、牧の方が朝雅を将軍に擁立しようとする陰謀が発覚したことで、時政とともに伊豆に隠退したのでした。

まとめ

中小豪族ながらも、幕府の実権を握るまで上り詰めた北条家。その成り上がりの背景には一族を巻き込んだ権力争いがありました。普段はあまり光の当たらない北条家の人々、彼らもまた、歴史を動かした人物であったと言えるのではないでしょうか。

文/豊田莉子(京都メディアライン)
肖像画/もぱ(京都メディアライン)
アニメーション/貝阿彌俊彦(京都メディアライン)
HP:http://kyotomedialine.com
Facebook:https://www.facebook.com/kyotomedialine/

引用・参考図書/
『⽇本⼤百科全書』(⼩学館)
『世界⼤百科事典』(平凡社)
『国史⼤辞典』(吉川弘⽂館)
『日本人名大辞典』(講談社)

 

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