帰蝶が美濃に隠棲? 信長の孤独感が凄い
I:帰蝶さん、どうしたんですか?と思っていたら、意外な心情が吐露されました。私はその台詞にいちいち突っ込みを入れながら見ていました。〈この城は石段が多すぎる〉→そうそう。〈上がるのに息が切れる〉→でも帰蝶さんは輿に乗って登るんでは?とか。
A:(笑)。そして美濃の小さな館(やかた)で暮らしてみようかと、言っていましたね。私が印象深かったのは、その後の台詞です。〈戦が終わって穏やかな世になったら遊びにおいでなされ。渋くて美味しいお茶を一緒に飲もう。約束じゃぞ〉ですね。結果的にかなわぬ約束になってしまうわけですが……。
I:この光秀と帰蝶とのやり取りの後で、光秀は信長と対峙します。「平蜘蛛の茶釜」のことは何とかやり過ごしたかに見えた光秀ですが、信長は、〈なぜ裏切る?帰蝶もそうじゃ。帝もそうじゃ。なぜ皆わしに背を向ける〉〈これはたわけの愚痴じゃ〉と弱弱しい感じでした。
A:広々とした安土城の240畳のセットが、信長の孤独をいっそう引き立てた感じがします。多くの家臣が離反した将軍義輝(演・向井理)が、〈誰かある〉と呼びかけても誰も応じなかったといったシーンが以前ありましたが、権力者の孤独を象徴するには格好の舞台になりました。それがまたもの悲しさを膨らませました。
I:かと思えば、〈羽柴秀吉はいずこにいる?〉と秀吉(演・佐々木蔵之介)を呼びつけます。
A:〈秀吉、そちが調べたことに間違いはないな〉〈この秀吉に抜かりはございませぬ〉のやり取りには鳥肌が立ちました。佐々木蔵之介さんの、これ以上ない陰湿な表情が凄い!
I:本能寺まで残り少ないですが、改めて要点を確認したいと思います。『麒麟がくる』は大河ドラマ59作目にして初めて明智光秀が主人公に採用されたドラマです。大河ドラマではこれまで15作品で本能寺の変が取り上げられていますが、いずれも〈信長目線〉でした。今回初めて〈光秀目線〉の本能寺が描かれるわけです。
A:どういう結末になるのか。最後までしっかり見届けたいと思います。
●ライターI 月刊『サライ』ライター。2020年2月号の明智光秀特集の取材を担当。猫が好き。
●編集者A 月刊『サライ』編集者。歴史作家・安部龍太郎氏の「半島をゆく」を担当。初めて通しで視聴した大河ドラマは『草燃える』(79年)。NHKオンデマンドで過去の大河ドラマを夜中に視聴するのが楽しみ。 編集を担当した『明智光秀伝 本能寺の変に至る派閥力学』(藤田達生著)も好評発売中。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり