今回含め、残り5話。いよいよ佳境に突入した『麒麟がくる』。大河史上最大規模のセットで登場した安土城に帰蝶がやってきた。
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ライターI(以下I):今週は久方ぶりに帰蝶さん(演・川口春奈)が登場しました。しかも信長(演・染谷将太)が心血を注いで築いた安土城に降臨です。
編集者A:降臨って(笑)……。その安土城ですが、以前から凄いセットが用意されていると噂されていましたが、あれほど豪華とは思いもよりませんでした。なんと240畳という大広間です。
ライターI:とにかくだだっぴろい!ですね。
A:欄間などもない、壮大な大広間でした。そして何より、信長が座す上段の間が圧巻です。安土城の内装は美術スタッフさんの創作だそうですが、モダンながら、信長らしさがあって違和感はなかったですね。
I:その240畳の部屋で光秀(演・長谷川博己)と帰蝶が面会します。〈この頃、殿のお気持ちが私にはわからん〉と心情を吐露します。
A:〈殿は何かを怖がっておられる〉とも言っていましたね。このシーンの前に信長がひとり、敗死した松永久秀(演・吉田鋼太郎)の信貴山城から回収した戦利品を前に嗚咽するシーンがありました。前週に自ら本願寺との戦いの前線に立って鉄砲に撃たれたり、原田直政の家臣に暴力をふるったりしていましたが、何やら心に闇を抱えているようで鬼気迫るものがありました。
I:残り話数が少なくなっている最終盤ですから、すべての台詞が本能寺につながっているのではないかと、一言も聞き漏らすまいと思ってしまいます。私は〈駿河の国に富士という日の本一の高い山がある。高い山には神仏が宿り、そこへ登った者は祟りを受けるそうじゃ〉という台詞が心に残りました。
A:信長が右大将に任ぜられたことを、足利将軍と同じ地位であるということで、〈天下一高い山じゃ〉と表現しました。帰蝶は〈登れば登るほど祟りを受けるかも〉と憂いを見せ、出世をけしかけた自分も祟りを受けるのではないかと心配していました。
I:どういうことなんですかね?前半戦は、信長のために鉄砲を調達すべく奔走していた帰蝶さんだったのに……。
A:登り詰めたことで祟りを受けるというのは、鎌倉幕府三代将軍の源実朝が、急激に昇進し、右大臣に任じられたことが「位打ち」だったといわれたことに似ていますね。
I:身分不相応な高い位に任じることで自滅させようという、公家社会特有の手法のことですかね?それを信長にやっていたということでしょうか。
A:いやいや帰蝶さんが登り詰めたことで祟りがなどというから、参照したまでです。
【帰蝶が美濃に隠棲? 信長の孤独感が凄い。次ページに続きます】