待望された「爆死」ではなかったものの……。
A:信長に反旗を翻した松永久秀ですが、織田信忠(演・井上瑞稀)を大将とする信長軍に城を囲まれ敗れます。自ら城に火をかけて、家臣に向けて〈わしの首をこの箱に入れて名物とともに焼き払え!〉と命じます。 自刃のシーンは、腹かっさばいて、短刀が腹部に刺さったまま、仁王立ちという力のこもったシーンになりました。大河史上に残るシーンになったのではないでしょうか?
I:そうですね。猛火の中での自刃は、後の本能寺を想起させました。だからこそ逆に、本能寺の変ではきっと同じようにはしないのではないでしょうか。それはともかく、私は、久秀の自刃のシーンに涙が流れて止まりませんでした。吉田鋼太郎さんの松永久秀は、本当に本当に絶妙な配役だったと思います。ずっと記憶に刻まれていくんだと感じました。
A:そして、松永久秀が伊呂波太夫に託した「平蜘蛛の茶釜」の行方を巡って、光秀と信長の間にまたぞろ不協和音が流れます。なんで光秀は信長に正直に話さなかったのでしょうか。まさか、「平蜘蛛の茶釜」が本能寺の変の動機にかかわってくるのか?と邪推してしまいました。
I:それはないです!と言い切れない様相になってきましたね。ところで今週私が特に印象に残ったのが、伊呂波太夫と光秀が対峙したシーンです。太夫が松永から預かっていた「平蜘蛛の茶釜」を光秀のもとに持参します。
A:光秀は、信長に正直に答えなかったことを〈(茶釜の行方を)知っているとここまで言いかけたが言えなかった。言えばこれから信長さまの手に落ち、わしは楽になれた。しかしなぜか言えなかった〉と言っていました。
I:この場面の光秀の表情の変化が凄かったんです。目を大きく見開く様は、光秀の心の内を見事に表していたように思えます。
A:松永久秀の罠だと主張して、〈ははははは!〉と目を見開く。光秀、どうしたんだ!と思いました。私には将軍義昭(演・滝藤賢一)同様にメンタルがやられているように感じましたが、このシーンは最終回まで見届けてから答えが出るような気がしてなりません。
I:今週は帰蝶(演・川口春奈)が久しぶりに登場しました。そちらの話は後編でしたいと思います。
帰ってきた帰蝶がまさかの信長からの離反。そして安土城240畳の大広間で信長が味わった「孤独」【麒麟がくる 満喫リポート】後編に続きます。
●ライターI 月刊『サライ』ライター。2020年2月号の明智光秀特集の取材を担当。猫が好き。
●編集者A 月刊『サライ』編集者。歴史作家・安部龍太郎氏の「半島をゆく」を担当。初めて通しで視聴した大河ドラマは『草燃える』(79年)。NHKオンデマンドで過去の大河ドラマを夜中に視聴するのが楽しみ。 編集を担当した『明智光秀伝 本能寺の変に至る派閥力学』(藤田達生著)も好評発売中。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり