優美で風格漂う漆工芸として知られる土佐古代塗。その技術は、明治初期に長州(現・山口県)から土佐の西部、佐川の地に移り住んだ絵師の種田豊水が伝えたことに始まる。長い歳月を重ねる中で、弟子たちによる工夫と改良が加えられ、現在の技法が確立した。
最大の特徴は、漆を厚く塗った木地に胡桃の殻の粉を蒔いてつけた表面のザラ地模様だ。これによって指紋がつくのを気にせず使え、頑丈な鎧の役割を果たすため傷がつきにくく手入れがしやすい。30以上におよぶ工程の多くは、漆を塗っては乾燥させる作業の繰り返しで、完成まで最低1か月はかかるという。
暮らしに寄り添う2品
土佐古代塗の唯一の継承者で、「美禄堂」2代目の池田泰一さん(63歳)は、「土佐の匠」と「現代の名工」に認定されている職人。「季久」の銘を持つ池田さんの作品はじつに穏やかで、気品にあふれている。表面と裏面に桜の意匠を施した「汁椀」は汁の熱が手に伝わりにくく、縁が外に少し反っているので口当たりがよく飲みやすい。箸は先までザラ地なので、料理をつまみやすいと使い勝手も上々。どちらも長く愛用いただける逸品である。
【今日の逸品】
土佐古代塗の汁椀と箸
美禄堂
7,480円~(消費税込み)