新型コロナウイルスの流行に伴い、マスク不足が問題になっています。医師人材総合サービスを提供する株式会社エムステージが「Dr.なび」登録の医師向けに新型コロナウイルスについての緊急アンケートを実施しました。医師たちはどう考えているのでしょう。早速みていきましょう。
■医師たちのコロナウイルス予防法も「手洗い・うがいの実施」
「先生が実施されている日常生活での予防法について教えてください」(回答数206 抜粋)と聞いたところ、回答者ほぼ全員が「何か実施している」と回答しました。主に手洗い・うがいを実施し、その他アルコール消毒やマスク着用など、この時期特有の感染症であるインフルエンザやノロウイルスや風邪、これから始まる花粉症と合わせて予防をしていることが伺えました。
さらに「新型コロナウイルスに関して、貴病院での対策は十分でしょうか?」(回答数206)と聞いたところ、はいが16%、いいえが20%、普通が64%でした。具体的な意見としては下記が挙がっています。
▼「はい(十分)」の回答者
・緊急体制をとっています。感染に関する対策室も設置しています。(感染症科)
・医局を通じて、全医師へ感染対策室から諸対応についてメールがきている。(消化器内科)
・日中の外来や夜間の救急外来の発熱患者で、武漢への渡航歴や濃厚接触歴のある人への対応のフローチャートを作成している。(糖尿病内分泌科)
・中国語の問診票を作成して、一般患者と接しない個室に直ちに案内する。問診票で疑わしい病態なら診察せず保健所へ報告して指示を仰ぐ。(循環器内科)▼「いいえ(不十分)」の回答者
・患者が来れば待合室などで感染する可能性は十分あると思う。(眼科)
・現在は診察する方向であるが,中国人観光客はすべてお断りする方針のようである。(精神科・一般内科)
・ゴーグルや防護服がない。(眼科)
・発熱者のための診察室が分離されていない。(外科)
・コロナウイルスに対する根本的な知識不足があり、予防法や対処法がきっちり決めきれていない。(総合診療科)
・ごく一般的な注意喚起。厚労省からの通知と思われる文書が各部署に配布された。(整形外科)▼「普通」の回答者
・指定施設ではないため、日常の感染対策をしている。(循環器内科)
・インフルエンザウイルス対策などと同様。(内科)
・指定施設になりました。昨日迄は疑い症例の受診はありませんでした。冬のイベントが始まっており、訪問客は少なくなると予想しますが、人の密集した中に中国人も来るでしょう。緊張します。(呼吸器外科)
・新型コロナウイルスによる肺炎疑い患者受診時のマニュアル策定。(消化器内科)
・一般的な感染流行期の対策を行っている。(呼吸器内科)
■一般用・医療用マスクや消毒液の不足による懸念点とは?
続いて「一般用・医療用マスクや消毒液が不足していますが、それらの不足により業務に支障はありましたか?」(回答数206)と聞いたところ、「はい」が13.6%、「いいえ」が86.4%という結果が出ました。具体的な意見としては下記が挙がっています。
▼「はい(支障がある)」の回答者
・マスクが1人1枚制となり、汚れた際の交換ができなくなった。(放射線科)
・更衣室など比較的自由にマスクが持ち出せる場所のマスクが設置されなくなりました。(乳腺外科)
・マスクは納入がストップして、1か月5枚の配給制になった。(外科)
・マスクが少なくなり、一人一日マスク一個に制限しています。(呼吸器外科)
・マスクをつけずに外来するように言われてしまった。(呼吸器内科)▼「いいえ(支障がない)」の回答者
・支障はないが消毒液は入荷できないとのことで、代替品を入荷することとなった。(精神科)
・今はまだ足りているが、今後払底する可能性もあり。(一般内科)
・何とか卸からマスクを確保した。(産婦人科)
・今のところ支障ないが使用制限が発令された。本部から供給不足となる危険性あると連絡があった。(循環器内科)
・大きな支障はないものの、マスクがサージカルマスクではなくなった。(外科)
さらに「今後、マスクや消毒液の不足より考えられる業務上の支障や懸念点(他疾患含めた感染など)にはどのようなものがありますか?」と聞いたところ、下記のような意見が挙がっています。
・同じマスクを長期使用する。最悪の場合手術数制限等が予想される。(消化器外科)
・医療従事者の一般病原菌への暴露率も高くなり、院内感染などが増加することが懸念される。(泌尿器科)
・他院では、外部者によるマスクや消毒液の盗難の事例があったと聞いた。(放射線科)
・地域上、肺結核疑いの患者さんも多く救急搬送されるため、マスクがないと受け入れ困難になる。(消化器内科)
・マスクは他物品で代用できるが、消毒液の不足は本来必要な方々(免疫抑制患者や担癌患者)にまで行き渡らなくなるのではと心配している。(眼科)
・感染性胃腸炎やインフルエンザが流行したときの標準予防策が困難となる可能性がある。(一般内科)
■新型コロナウイルスに関する医師たちのコメント
・特定の対象者だけでなく広く気軽に検査を行えるようにしてほしい。(一般内科)
・情報が錯綜し対応が後手に回ったことは遺憾である。先日抗HIV薬の使用による改善例が報告されていたが理屈としては理にかなっており、日本でも緊急事態に対して合理的な治療が可能な非常時体制が整備されることを期待する。(内分泌科)
・common diseaseとなると予想。(呼吸器内科)
・未知の部分が多く不安。中国人がいると過度に身構えてしまう。(外科)
・騒ぎすぎ感があるが、この対策でインフルエンザの罹患率が下がっているようなので助かっている。コロナウイルスの流行がなくても毎冬このくらい警戒して感染対策をすればいいのに、と思う。(内科)
・無症状なのに保菌しているという方は見分けがつかないので心配です。(感染症科)
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新型コロナウイルスの罹患者数、死亡者数など、感染が拡大していることはわかっているものの、死亡例の患者背景や正確な致死率など、医療現場がほしい情報が得られていないことで不安を抱えている医師も多いということがわかりました。これは医師以外の人たちも同じですね。
手洗い・うがいを励行しながら予防しつつ、落ち着いた行動を心がけたいですね。
■アンケート概要
「新型コロナウイルスによるマスク不足など、医療機関での影響について」
集計期間:2020年2月6日(木)~2月9日(日)
有効回答数:206名(男性:167名・女性:39名)
対象:「Dr.なび」会員医師
方法:インターネット調査(会員医師へのメールマガジンにより回答フォームを送信)