夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。月曜日は「健康・スポーツ」をテーマに、プロレスラーの神取忍さんが執筆します。

文/神取忍(プロレスラー)

関東も梅雨入りしました。じめじめしたこの季節になると、腰やヒザなど関節の痛みを訴える人が多いですよね。雨が降って低気圧になると、体が気圧の変化に順応しようとして、血圧と心拍集が上昇します。それで交感神経の活動が活発になり、感覚が敏感になって、痛みをより強く感じるんだそうです。だから、このような症状を「気象病」とか「天気痛」ということもあるんだとか。

私もこの時期、古傷がうずきそうになることがあります。そんなときには予防策として、サポーターなどを使って患部が冷えないようにしていますが、血行を良くするために体を動かすことも心がけています。今回は、そんな私の体験をもとに、読者の皆さんにも適した方法、名付けて「神取運動」をご紹介したいと思います。

上半身と下半身、腰部、3つの部位を意識して動かす

ちまたには、ストレッチやエクササイズのハウツー本が数多く出ているので、いろんな動作をたくさんしなければいけないと思っている人が多いと思いますが、私が毎日心がけている運動は、いたってシンプルでカンタン。上半身、下半身、腰という3か所の筋肉を伸ばしたり動かしたりするだけで、体全体がほぐれて血行がよくなります。

【1】上半身の運動

年齢を重ねると、肩が縮こまるというか、肩の可動域が小さくなってきますよね。これは肩や肩甲骨の可動域を広げることで、肩や首筋のコリをやわらげる運動です。

肩幅と同じくらいに足を広げて立ち、目線をまっすぐにして前を見ながら両腕を90度に曲げます。そして、腕を勢いよく前後に振る。腕を後ろに強く振り上げるときに、自然とカカトが地面から浮いてくる。そのくらいの勢いですることを心がけてください。これを初めは20回。慣れてきたら20回×2セットやりましょう。

両腕を90度に曲げて、ひじを前から上に引き上げます。

前に上げた腕を勢いよく後ろに、振り上げます。しっかり腕が振れていると、自然にかかとが浮き上がります。
※今回ご紹介する神取運動は、仕事の合間にもしてほしいので、オフィスでやっているイメージで撮影してみました(笑)。

【2】下半身の運動

椅子に座った状態から立ち上がる運動です。目線は常にまっすぐ前、背中は姿勢を正すようにピンと伸ばしましょう。そして、立ち上がるときに肛門に力を入れます。この一連の動作を、体中の筋肉にスイッチが入り、電流が伝わっていくようなイメージを持って行なってみてください。足の先まで意識が届き、体全体で動いている感じがしますよ。この運動は初めは10回、慣れてきたら10回×2セットやってみましょう。

椅子に浅く腰掛け、前を向いて視線を上げる。

足を肩幅くらいに広げ、肛門に力を入れて、背筋をピンと張ったまま立ち上がります。

慣れないうちはヒザに手を添えてもいいですが、目線は前、背筋を伸ばすことは忘れずに。

【3】腰部=大腰筋の運動

大腰筋とは、背骨と脚をつないでいる筋肉で、股関節を屈曲させる最も重要な筋肉です。いわゆるインナーマッスルと呼ばれる、体の深層にある筋肉で、良い姿勢を保とうとするときに働くため、しっかり歩いたり、走ったりするときには、この筋肉の働きが不可欠です。年齢を重ねていくと、この筋肉が衰えてくるから、うまく歩けなくなる人が多くなる。歩くときにすり足になってしまう人がいるのは、この筋肉が衰えて、足(つま先)を上げられなくなるからなんだよね。

前置きがちょっと長くなっちゃいましたが、やってみましょう!

背筋を伸ばして立ち、片足を一歩前に踏み出します。そして、そのままゆっくり腰を下ろしていく。そうすると、後ろの足の大腰筋(太もものつけ根)が、痛いけど気持ちよく伸びているのを感じるはずです。

腰を下ろしただけでこの「痛気持ちいい」感が得られなかったら、前に踏み出した足のヒザを少しずつ前に倒してみましょう。そうして痛気持ちよくなったら、大きく呼吸をしながらその姿勢を10秒キープ。10秒経ったら、足を元に戻します。

これを左右の足で2回ずつ繰り返します。一歩踏み出したあと体がふらついて、倒れるのが心配な人は、壁や椅子の背などに手をついて体を支えながら行なってください。

左の太ももの付け根が痛気持ちよく伸びたところで、その姿勢のまま10秒キープです。その間、呼吸することも忘れずに。

まっすぐ前を向き、目線を上に保つだけで人生も変わる!

どの動作をするときも、気を付けてほしいのが「目線」です。

まっすぐ前を向いて、目線を上に保ちながら行なうのがポイント。すると、姿勢がおのずと正しくなり、体の筋肉と骨がきちんと動いて、血液が体全体に流れていくんだよね。

目線を上げるというのは、この神取運動のときだけではなくて、日常生活を送る上でも大切なんだよね。

同じ姿勢でずっと下を向いていると、気持ちまで滅入ってきて、背中も丸くなる。すると、呼吸も浅くなって、考えもまとまらなくなってくる。

逆に目線を上に保つと、姿勢が良くなるので呼吸が深くなるでしょ。すると、体中に酸素が巡るので、体の動きがスムーズになって、考えもまとまるようになるわけ。その結果、なぜだか気持ちも前向きになって生きていけるようになる。

そう、目線で人生が変わるんだよね。

今回ご紹介した運動は、できれば毎日するのが理想。でも、それが無理なら、日常生活の動作を意識して行なうだけでも、効果があると思います。例えば、ちょっと早く歩いたり、エレベーターを使わずに階段を使って昇り降りをしたりするだけでもいいんですよ。

体を動かすことは、人間にとってホントに大事なこと。「運動しよう!」というとハードルが高くなって「何すりゃいいのかわからない」っていう人が多いけど、要は体を動かせばいいだけ。

体を動かして骨が動けば、筋肉が動き、血液も体中に流れ始める。ちょっとした心がけで行なえるそういった動作、それこそが運動! それを日常生活の中で意識して行なっているかどうかで、体も心も変わってくる。これこそが運動の本質的な効用なんだよね。

神取運動で運も動かそう!!

文/神取忍(かんどり・しのぶ)
神奈川県生まれ。プロレスラー。1983年から全日本選抜柔道体重別選手権(66kg級)3連覇。1986年女子プロレスデビュー、現在は総合格闘技にも挑戦中。女子プロレス団体LLPW-X代表。

 

関連記事

ランキング

サライ最新号
2024年
5月号

サライ最新号

人気のキーワード

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

小学館百貨店Online Store

通販別冊
通販別冊

心に響き長く愛せるモノだけを厳選した通販メディア

花人日和(かじんびより)

和田秀樹 最新刊

75歳からの生き方ノート

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店