実際に問診票を書き込み、しばらくすると診療室で漢方医と初対面ですが、自覚症状などについていろいろと質問されました。通常のクリニックに比べて、とてもよく話を聞いてくださる印象です。
「漢方医学では実は問診をとても重要視しています。患者さんの状態がなぜ今の状態になったかをちゃんと洗い出すために、人によっては最初30分程度問診に時間を使うこともあります。
そこから、脈を診ていただき、診察室横のベッドに横になるように言われました。ここから始まるのが「腹診(ふくしん)」と呼ばれる漢方医学独特の診断方法のようですね。
「日本の漢方医学の『切診』にはお腹を触る『腹診』があります。
中国では皇帝などの身分の高い人の腹を触ることがタブーとされていたため『腹診』は発展しなかったという背景もありますが、腹を触ることで人の『気・血・水(き・けつ・すい)』の状態、抗病反応(虚実)、処方の決定の手がかりをよく知ることができます。
ちなみに『気血水』の『気』は気のエネルギー、『血』は血液、『水』は血液以外の水分を指し、身体にとって重要な3つの要素とされています。
西洋医学でも腹診はあるのですが、西洋の腹診は内臓が腫れていないか確認するのを目的としており、漢方のような体質チェックは目的とされていません。
なるほど、やはり診断の実際を見てみると、通常のクリニックとは異なった漢方医学独自の手法が取られているのですね。
次回は診断結果を踏まえて、どのような処方につながっていくのかということをお話したいと思います。
文/葉山茂一(はやま・しげかず)
漢方デスク株式会社代表取締役。漢方・薬膳の総合ポータルサイト「漢方デスク(http://www.kampodesk.com)」を企画・運営。
取材協力/渡辺賢治(わたなべ・けんじ)
慶應義塾大学環境情報学部教授医学部兼担教授。漢方デスクの漢方医学監修を務める。
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